発達障害を抱えた子の可能性を伸ばす指導(4)前例のない学校づくりに挑戦

明蓬館高等学校校長 日野 公三

2009年の明蓬館高校開校からさかのぼること5年前、04年に私たちの取り組みは始まった。国の特区制度にのっとった正式な高等学校として、石川県の白山市にアットマーク国際高校を開校したのだ。わが国初の、自治体認可による株式会社立の正式な高校である。

前例のない学校づくりには困難が待ち構えていた。従来の公私立高校では難しい生徒の個別学習ニーズへの対応には、学校の制度改革が不可避だった。インターネットを活用して教室に出向く授業を免除したり、掲示板システムを介して個々の生徒と教員との頻繁なやりとりを実現したりした。

合わせて、教師のコーチングスキルを充実させ、定期テストだけではなくポートフォリオなどの学習成果物で成績評価する仕組みも導入した。また通信制高校初の総合学科を開設し、選択できる科目数を増やした。これらの取り組みはいずれも多くの論議を呼んだ。

そんな中、同校では何人もの発達障害の生徒を受け入れた。とりわけ東田直樹さんとの出会いは、私たちの活動に大きな影響を与えた。

東田さんは小学6年生から中学3年生まで特別支援学校に在籍していた。特別支援学校の友人のほとんどがそのまま高等部へ進学し、職業訓練を受けていたので、自分もいずれそうなるだろうと漠然と思っていたという。

だが、中学3年生になって高等部への進学が現実的になったとき、彼の中で「何かが違う」という思いが湧き上がった。その源泉にあったのは、「自分の人生を人に決められてしまう」いたたまれなさと「誇りを守りたい」意思だったと東田さんは語る。

保護者は彼の意志を尊重し、普通科高校の受験をサポートした。だが、普通科高校への進学の夢は残念ながらかなわなかった。他の高校や通信制サポート校にも進学の相談をしたが、受け入れてくれる学校はなく、行き場をなくしてしまった。

そんなとき、ある教育関係者の紹介でアットマーク国際高校の存在を知る。同校への進学を許可され、一生懸命勉強に励んだ。スクーリングや遠足でいろいろな人と出会い、同校での経験が彼を大きく成長させた。

東田さんは現在、自閉症作家として活躍している。ベストセラーになり、英訳もされた『自閉症の僕が跳びはねる理由』(角川学芸出版)などたくさんの著書を出している。

アットマーク国際高校では、この東田さんと南雲明彦さんという生徒の入学を機に発達障害がある生徒との関わりを深めた。東田さんは重度の自閉症、南雲さんはディスレクシア(読字障害)があった。彼らと関わる中で、発達障害がある生徒の潜在能力の高さや可能性を幾度となく目の当たりにした。

同時に「不登校、引きこもりの陰に発達障害あり」と気付かせてもらう機会もあった。こうした経験から、生徒たちが明るく胸を張って、笑顔で通える高校をつくりたいと考えるようになった。

以来、教育と福祉、両面のアプローチが必要な特別支援教育を通信制高校の枠の中で実現することを目指した。教職員体制やeラーニングの整備を進めながら、開校に至ったのが明蓬館高等学校である。