発達障害を抱えた子の可能性を伸ばす指導(5)スペシャルニーズに応えるSNEC

明蓬館高等学校校長 日野 公三

明蓬館高校は2009年4月に開校した広域通信制高校だ。福岡県川崎町の廃校になった小学校を本校舎にして、少子高齢化に悩む地域の活性化貢献もうたっている。

通常、通信制高校は在宅学習と年間20日前後のスクーリング(面接指導)が基本的な学習形態である。同校の場合、年間を通してインターネットによる面接授業を進め、本校舎で行う体験的な授業では、生涯の思い出となるような感動の機会を創出している。

そして13年には発達障害のある生徒を受け入れるべく、特別支援教育センターのSNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)を新たに創設した。

SNECでは教育に福祉的なアプローチを取り入れ、通級指導と相談室登校に対応している。中でも力を入れているのは相談員と支援員の充実である。学習面の指導計画とともに、生徒・保護者双方のニーズに沿って個別支援計画を策定し、常駐する発達障害専門の相談員と支援員が生徒の相談に応じたり、支援をしたりする。

こうした「生徒本人の状態や認知特性に合った学習スタイルを考え、個別の支援計画を立てる」取り組みは、周辺環境に敏感な発達障害の生徒が学ぶために不可欠なものだ。生徒だけでなく、保護者とのコミュニケーションも常に意識し、相談員と保護者の対話の場も設けている。

また、音や光に敏感な発達障害の生徒のために、教室では過度な掲示をなくし、ブース型の机に向かうよう配慮している。登校してきた生徒たちは、インターネット授業でそれぞれの履修科目を学び、レポートに取り組む。ノート型パソコンで自習したりオープンスペースで教員と向かい合ったり、共通する学習テーマで成果物を作るために話し合ったりと、生徒の学習形態は多様だ。支援員は生徒たちの間を渡り歩きながら、彼らのリクエストスキルを引き出している。

SNECに在籍する生徒の多くは、中学時代に不登校状態に陥っていたり、普通級にいながら学業への自信と関心を失っていたりする。通常指導学級に在籍するなど、障害に応じた指導を受けていても、大勢の生徒がいる教室に入るのが苦手だったり、光や音に過敏だったりする。また、情動や言動から発達障害の傾向が疑われていながら、学力に問題がないために子供自身や保護者が検査を拒否するなど、適切な対応を受けていないケースもある。こうした生徒が中高校生になり、鬱(うつ)症状や引きこもり、摂食障害、不安症状に陥っているケースは決して少なくない。

SNECのような、教育と福祉の両面で生徒と保護者にアプローチする試みはまだ始まったばかりだ。学業への関心を回復し、笑顔あふれる表情になっていく生徒たちを見ていると、個々の生徒の要求に耳を傾け、時間を費やし、興味・関心を引き出しながら取り組ませる学習の効果を実感する。