エンカレッジシートに最も意見を書くのは、中間層の生徒たちだ。学級の問題を知りつつ傍観している中間層の生徒たちは、特に大きな問題もなく日常を過ごしている。学級の問題を解決するには、この中間層の生徒たちの勇気を喚起する手だてが必要だ。そのために、エンカレッジシートのテーマ立てに工夫を施す。具体例で見てみよう。
【事例】
テーマ「居心地良く過ごしているかな?」例えば…… ・お菓子を持ってくる ・お菓子を分け合っている ・授業中や休み時間にお菓子を食べる「学校の決まりを守っていない」という学級の問題に対し、この事例ではあえて直接的なテーマを設定していない。「例えば……」に続く文言が生徒の行動を示すので、体験的な思考を喚起するために、健康な学級をイメージしやすいテーマで作成した。問い①~④への生徒たちの主な意見は以下の通り。
①学級にとってマイナスになることは何でしょう?
- 自分勝手な人が増え、協力性や思いやりなどがなくなる。
- これがきっかけとなり、学級のいろんなことが崩れていく。
- 注意ができない学級になる。自分たちの学級の評判が悪くなる。
- 他人に迷惑をかけていることだと思う。
- 授業に集中できなくて学級の信頼感がなくなる。
②学級にとってプラスになることは何でしょう?
③どんな目的なのかな? もしかして……
- 目立ちたかった。自分たちだけ特別というのを見せつけたかった。
- 仲間をつくりたかった。
④問題を起こした人や学級を勇気づける言葉を書いて下さい。
(問題を起こした人へ)
- 持ってきていることがかっこいいとは限らないよ。
- 友達同士でも断る勇気を持とう。
- これからは心改めて持ってこないようにすれば大丈夫だと思う。
(学級を勇気づける言葉)
- やったことを隠すために協力するのではなく、良いほうに協力しよう。
- 信頼関係が生まれる仲間として、最高の学級にしよう。
- マナーやルールを守れるクラスになっていこう。
- 今はバラバラだけど、これを乗り越えれば、また行事で協力したときのようにまとまって笑顔で学級が笑顔な関係になる。
エンカレッジシートの実施後は問題行動が消失し、とげとげしい学級の雰囲気が温かくなったと報告された。