発達障害を抱えた子の可能性を伸ばす指導(6)社会生活でのつまずき

明蓬館高等学校校長 日野 公三

2009年の明蓬館高校開校、13年のSNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)開設によって、発達障害の生徒を積極的に迎え入れ、チームとしてサポートする体制を整えた。この経緯について述べてみたい。

明蓬館高校のグループ校には、00年に開校した東京インターハイスクール、04年に開校したアットマーク国際高校がある。3校合わせて約3千人の卒業生がおり、卒業生や保護者が母校を訪ねてくれることもある。

彼らの話を聞くと、私たちの学校を卒業後、もしくは大学進学を経て就職しても、その後引きこもってしまったり転職を繰り返したりするケースが少なくないという。実家を離れ一人暮らしをする中で、体調を崩したり生活が破綻したりするケースもあった。

卒業生の中には、大学の電子工学科を経て大学院まで進んだ者もいる。彼はある有名百貨店に就職しシステム課に配属されたのだが、上司や同僚と会話のキャッチボールがうまくできず、上司批判と受け取られる言動を繰り返したため、疎んじられて職場に居場所がなくなっていた。

当人は提案や提言のつもりだったが、相手側からすれば問題点を指摘するばかりで、自身の改善すべき部分は顧みない人間だと受け止められていた。彼は職場も、その仲間も決して嫌いなわけではない。自分なりの正論を真っすぐ主張してしまうために、言動がとげとげしく見えてしまうのだ。

上司が「ここに資料があるから、時間があるときに見ておいて」と指示すると、時間があるなしの判断ができず「時間がなかったので見ていません」と言い、上司の機嫌を損ねてしまう。「この間頼んだ例の件はどうなった」と聞かれると「はっきり『頼む』と言われなかったので何もやっていません」と答えてしまう。こうしたことが繰り返されると、職場での評価は下がってしまう。

社会生活での小さなつまずきが積み重なり、最終的に就労や家庭生活のつまずきに拡大してしまうこともある。とりわけ、青年期以降は職業生活からの離脱が起きやすく、引きこもったり、年齢相応の身辺自立が困難になったりもする。