関西学院初等部教諭 森川正樹
楽しく書かせることで引き出される子供の力
誰かにやらされているときと自ら楽しく取り組んでいるときでは、結果、経過、成果物に大きな違いが出る。「書くこと指導」も、子供たちが楽しんで取り組んでいるかが重要になる。「楽しく書く身体」を手に入れるために、教室内が「楽しく書いている状態」になるように心掛けよう。
書き慣れるための「作文レシピ」
森川学級ではさまざまな作文を書かせるが、それらの活動を「作文レシピ」と呼び、個々の活動も子供たちが興味を持つようなネーミングにして紹介している。たかだか呼び名だとばかにしてはいけない。メンタルが大きく影響する書くこと指導においては、ネーミングの段階から工夫を凝らし、子供たちが少しでも前のめりになるよう仕組まなければならない。「本質から外れる」と無視するのではなく、「できることは全て行う」。この気概が大切だ。
実際の指導 ~レシピメニュー~
(1)『わが子をよろしく!』
作文指導導入期にお勧めしたいのが、『わが子をよろしく!』というもの。1年生ではまだ難しいが、中学年以上に向いている指導である。
子供たちは「自分の親になりきって書く」という設定を面白がり、熱中する。また、このレシピの設定により、子供たちに自分を客観的に見る視点が生まれる。視点が切り替わり、「うちの子、なかなか宿題を始めるのが遅くて、時間の切り替えがへたなんですよ」といった書きぶりが見られるようになる。余談だが、個人懇談の前に行うとベスト。読みながら「だったらなおしてくれればいいのに!」と、保護者と一緒に盛り上がれること請け合いだ。
(2)『カードで口頭作文』
このレシピは1、2年生にお勧め。文字を覚えさせながら指導を進められる。1年生の担任になると使用する、ひらがなやカタカナが1文字ずつ入った「文字カード」。このカードを活用して口頭作文にトライさせる。一連の流れを以下の例で見てみよう。
教師は子供たちを列ごとに1人ずつ当てていく。
①「あ」のカードを見せ、教師「さんはい」→子供たち「あ!」
②教師「あのつく言葉」→A君「あり!」→Bさん「あたま!」
(4、5人続いたところで)
③教師「あ、のつく文章!」→Cさん「あさひがのぼる」→D君「あたまがいたい」
(楽しく「ツッコミ」を入れながら進める)
慣れてきたら「い」と「う」の2文字を入れて文章作り、3文字を入れて文章作りというように発展させていく。
さらに「文字カード」を「イラストカード」に持ち替え、今度は絵を見せて文章を作らせる。活動の中で子供たちは自然に主語・述語を学び、そこに修飾語が入って……という経験を積むことになる。低学年ではたっぷりと口頭で作文させたい。