発達障害を抱えた子の可能性を伸ばす指導(9)集団生活を無理強いしない

明蓬館高等学校校長 日野 公三

一部の教師には、生徒の成長のために集団に参加させなければならない、集団生活による半強制的な刺激が必要だ、という思い込みがいまだに見られる。

生徒同士でも「あの子は集団に入れない子」という見方で、発達障害の子供に違和感を抱いている状況もある。

発達障害のある生徒は、特に思春期に集団からの違和感を受けやすく、そういった子供を無理に参加させる必要はない。個別に学習環境を調整し、適応できる環境の要件を探し出すことが先決になる。キーワードは「生徒の自己選択」だ。

生徒自身にどの集団に所属したいかを考えさせ、「ここに行きたい、ここにいたい」と思える場所を選択させない限り、移動先で第2次、第3次の障害が出やすいのである。

特に中学生から高校1、2年生の時期にかけては、同年代の呪縛から「価値観の同質化」傾向がより強まる。これは脳の構造上、社会生活で「異分子や異質なものをはじく」傾向がみられる時期であることも関係している。

思春期のホルモンと成長ホルモン、発達障害とのせめぎ合いの中で、異分子をはじく傾向が人生の中で一番強くなる。それがこの時期なのだ。

特に同年代に対しては攻撃的になりやすい。大学生や社会人になると、あの頃は一体何だったのかというくらい穏やかになることがある。また、善悪や倫理上の判断に一番悩むのも思春期だ。脳科学者も言っているが、この年代は脳が最もアンバランスな状態にある。

大人になって社会に出れば、ほとんどの人が異年齢の関わりの中で過ごすようになり、同年代だけで長い時間を共有する機会はあまりない。それを踏まえれば、中学・高校時代の集団活動のスキルが、長い人生においても重要なものだと思い込む必要はない。

思春期から青年期の特別支援教育で大切なのは、「他人の支援があればできること」を増やすことだ。依存できる対象を一つでも増やしていく。1人でできることを探すよりも、多くの他者の力を借りながらスキルと手だてを増やし、自信を深めていけるようにするとよい。