発達障害を抱えた子の可能性を伸ばす指導(10)個人の満足を社会的ニーズに

明蓬館高等学校校長 日野 公三

思春期から青年期の特別支援教育で目指す自立とは、生徒ができることをスモールステップで増やしていけるよう、支援と伴走を繰り返すことだ。合わせて、生徒が依存できる人に巡り合える機会を創出することである。少しずつであっても、そうした人や対象を増やしながら、他人の力や援助でできることを広げる。それに尽きるだろう。 そのために、私たちのSNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)では個別の教育支援計画を作成し、指導している。高校で生徒が依存できる人を増やすには、学校と家庭だけではなく、福祉、医療、地域(行政)、企業などの各セクター(領域)と協働して、支え手や伴走者を見つける視点が必要だ。 高校で特別な支援が必要な生徒には、受給者証や障害手帳があれば、行政も障害者総合支援法にのっとった支援の対象として、積極的に相談のテーブルについてくれる。求めさえすれば、得られる公的サービスはかつてなく増えている。 SNECでは、心理相談員を中心に行政の各部署や担当者がつながり、保護者も含めたケース会議を定期的に開催する機会も増えている。今後高校は、福祉の社会資源とつながるためにも自発的に動いていかねばならないだろう。 私たちは発達課題がある生徒に貴重な高校生活を過ごす場所を提供したいと考えている。生徒の人生がここで変わる、変えられる、という場所だ。生徒にそれまでいろいろなことがあったとしても、より良い3年間の高校生活で人生を変えられる可能性は十分にある。私たちは変えたい、変えてみせると考えている。 スペシャルニーズを持つ少数の生徒に焦点を当て、彼らが満足と達成感を感じる教育体制を構築できれば、やがて大多数の教育ニーズも満たすことができる。個人や少数の満足だけではわがままと受け取られるが、大勢の満足が集まれば社会的ニーズになる。明蓬館高等学校とSNECは、そんな思いから出発した。 大多数のニーズからビッグアイデアや革新的なサービスが生まれるケースは少ない。われわれ学校教職員は前例にとらわれない柔軟な感性、敏感な感受性、違和感や疑問を唱え続ける姿勢を通じて、新たな教育のヒントを多く得ている。 日々、教育活動の改善や改良を確実に行いながらブレイクスルーする。これからもそんな毎日を過ごしていきたい。

(おわり)