小学校から高校までを1冊に「キャリア・パスポート」が描く軌跡(2)キャリア・パスポートの必要性

筑波大学教授 藤田 晃之

新学習指導要領は、2016年12月に中教審が取りまとめた「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」に基づいて作成され、告示された。

同答申が「子供一人一人が、自らの学習状況やキャリア形成を見通したり、振り返ったりできるようにすることが重要である」とした上で、児童生徒自身が小学校から高校までの「学びのプロセスを記述し振り返ることができるポートフォリオ的な教材」(=キャリア・パスポート)の導入を求めていた点は重要である。

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の意識調査が示す通り、日本の子供たち、とりわけ中高校生は学校の学習に自分の将来との関係の意義が見いだせず、学習意欲も低い傾向にある。

広島県の「わたしのキャリアノート-夢のスケッチブック」(小学校版)

各教科などで学んだことが、一人一人のキャリア形成やより良い社会づくりにどのように生かされるかを見据えつつ、学ぶ意義を実感できるようにすることは、新学習指導要領に与えられた喫緊の課題の一つであった。

こうした背景から、新学習指導要領の前文では「生涯にわたる学習とのつながりを見通しながら、児童/生徒の学習の在り方を展望していくために広く活用されるものとなることを期待して」指導要領を定めたと明示する。

総則で「児童/生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を、計画的に取り入れるように工夫すること」を各学校に求めたのは、極めて自然な成り行きと言えよう。

総則が「児童/生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」と定め、学級活動・ホームルーム活動の項目に、小・中・高を貫くキャリア教育の「要」として「一人一人のキャリア形成と自己実現」を設けたのも、いわば必然だった。

「一人一人のキャリア形成と自己実現」の指導に当たっては「学校、家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方(小・中)/将来の在り方生き方(高)を考えたりする活動を行うこと。その際、児童/生徒が活動を記録し蓄積する教材等を活用すること」としている。

ここで示された「活動を記録し蓄積する教材等」が、まさにキャリア・パスポートなのである。