小学校から高校までを1冊に「キャリア・パスポート」が描く軌跡(4)収録シートを厳選する

筑波大学教授 藤田 晃之

2020年度からの「キャリア・パスポート」本格導入を見据え、その準備に着手した学校は多いだろう。

このような状況で懸念されるのは、文科省が出した事務連絡「『キャリア・パスポート』例示資料等について」別添の「様式例」の躊躇(ちゅうちょ)なき踏襲、いわば「完コピ」の多発である。

この点について、同事務連絡でも「別添に示した様式例はあくまでも例示であり、教委や学校が柔軟にカスタマイズすることが前提」という趣旨をわざわざ説明している点は見落とせない。

北海道教委上川教育局の「マイノート」(小学生用)

それぞれの学校に在籍する児童生徒の実態や地域の実情は多様で、キャリア教育を通して身に付けさせたい力もそれぞれ異なる。学校行事や「総合的な学習(探究)の時間」の在り方も、学校ごとに独自の工夫がなされており、高校では学科やコースによって異なる教育活動が展開されている。

これらの違いをなおざりにして、様式例の書式・内容をそのまま使用すれば、キャリア・パスポートは全国どこも同じ「金太郎飴(あめ)」状態の、空虚で硬直したものになってしまう。

ただし、キャリア・パスポートは小中高の12年間を通じ、いわば「持ち上がり方式」で活用されるものだけに、学校ごとに全く異なる内容では、進学先での活用に支障が生じることも想定される。

そのため、都道府県や市町村教委の絶妙な「さじ加減」に基づく方針や、各学校に対する指導助言は不可欠である。特に義務教育段階では、中学校区単位で情報交換の機会を設定することなどが必要だろう。

キャリア・パスポートに収録するシート類は、学校・家庭・地域での学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返るためのものである。多くの学校、とりわけほとんどの小学校では、1年間の学習記録などを丁寧にファイリングして子供たちの成長を振り返る活動を行っている。

だが、それらのファイルをそのまま学年持ち上がり方式にしてしまうと、高学年になる頃には「収録記録が多く雑多で、振り返ることができない」状況に直面するだろう。まして、それを引き継ぐ中学校や高校で取り扱いに困るだろうことは、容易に予測できる。

同事務連絡が「各シートはA4判(両面使用可)に統一し、各学年での蓄積は数ページ(5枚以内)とすること」と指摘しているのを参照し、収録シートを厳選することも重要な課題である。