小学校から高校までを1冊に「キャリア・パスポート」が描く軌跡(7)国内の先進事例―兵庫県の実践

筑波大学教授 藤田 晃之

「キャリア・パスポート」の全国的な導入に先駆けて、キャリア教育に資するポートフォリオ型の教材を開発し、活用している自治体は少なくない。県や政令指定都市レベルに限定しても、青森、秋田、埼玉、愛知、滋賀、兵庫、広島の各県、千葉市、川崎市などが挙げられる。

今回は兵庫県に注目し紹介したい。兵庫県のキャリアノートモデルの特質の一つは、その名称に表れている。「キャリアノート」を作成する主体は各学校であり、県教委が作成した収録シート類はあくまでも「モデル」にすぎないという方針は明快である。

実際に、教師用指導資料には「キャリアノートモデルを参考に、各学校や児童の実態に応じたキャリアノートを作成してください」といった指示が随所に見られる。

兵庫県「キャリアノートモデル」の設問

キャリアノートモデルには、県内全ての児童生徒に提供される系統的な「兵庫型体験教育」の見通しや振り返りの仕組みが設けられている点にも注目したい。

小学校3年生の「環境体験事業」、5年生の「自然学校推進事業」については、当該学年末用シートに振り返りの欄が設けられており、中学校2年生時の「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』推進事業」、高校生時の「就業体験事業」や「ふるさと貢献活動事業―トライやる・ワーク―」では、事前指導・事後指導の一環として活用できるシートが準備されている。

設問もユニークである。例えば、中学校1年生用シートでは、「『働く』とは、物を作ったり、販売したり、サービスを提供したりすることを通して、誰かの役に立ったり、誰かを助けたりすることとも言えます。『働く』ことは、誰かを笑顔にすることであると言っても良いでしょう。あなたが30才になった時、あなたはどんな人の笑顔につながることをしていたいと思いますか」と尋ねている。

2年生には「あなたは30才です。あなたの家族や職場の仲間・上司になったつもりで、あなたへの感謝やねぎらいのメッセージを書きましょう」と投げ掛ける。

3年生では「あなたは30才です。ある日、ラジオ番組の街頭インタビューをしているレポーターからマイクを向けられました。そのレポーターは、『あなたが日頃大事だと思っていること、生きていく上で大切にしていることを教えてください。』と言っています。30才のあなたは、何と答えるでしょうか」と問うている。

こうした創意工夫があふれるシートによって、児童生徒に将来を思い描くための具体的な糸口を提供しているのである。