小学校から高校までを1冊に「キャリア・パスポート」が描く軌跡(9) 海外での活用事例

筑波大学教授 藤田 晃之

社会的・職業的自立に向けて必要な資質や能力を身に付けられるよう、子供たちがこれまでの学習経験を振り返ったり、自らの将来を展望したりするためのポートフォリオを導入している国は多い。とりわけ欧州各国ではその活用が進んでいる。

例えば、オーストリアでは9年生(日本の中学校3年生に相当)から「My future Plus」と名付けられたポートフォリオの作成を推奨しているし、隣国のドイツでも、進路の選択・決定に資する目的の「Berufswahlpass」、社会参画に必要な資質・能力、職業技能の向上を支援する「Profilpass」が、中等教育段階から各州で活用されている。

これらポートフォリオが電子化されている国も少なくない。フランスでは前期中等教育段階(中学校)以上の生徒を対象にした「Folios」が全国規模で運用されている。進路情報データベースと、個々の生徒の学習記録やキャリア形成に関わる諸経験の記録などを統合したもので、パソコンやタブレット端末からアクセスできる。

青森県の「あおもりっ子キャリアノート」(小学校低学年用)

リトアニアでも学校の判断によって、前期中等教育段階から学習経験や成績、将来計画などを記録する「e-folder」が導入できる。このように欧州諸国では、中等教育段階からの導入・活用が一般的になっている。

では、学習記録の蓄積やキャリア形成支援のためのポートフォリオ活用先進国とされている米国はどうだろう。

同国の教育学分野の論文検索データベース「ERIC」で、「career portfolio」を検索語にして分析したところ、2019年5月現在で691件の論文などが抽出された。結果を教育段階別にみると、「高等教育・継続教育・短期大学」の区分が298件と最も多く、次いで「高等学校・中等教育全般・中学校」の各区分および7年生以上の学年区分に該当するものが102件となっている。

一方、「小学校」区分に特定された論文などは11件のみで、約半数は小学校教諭や管理職のためのポートフォリオについて言及したものだった。小学校段階からの取り組みは、同国でもいまだに例外的な存在なのである。

このようにみていくと、小学校から高校までの12年間の蓄積を前提にした日本の「キャリア・パスポート」の独自性が際立つ。世界に向けた、取り組み状況と成果の発信が期待されているといえよう。