小学校から高校までを1冊に「キャリア・パスポート」が描く軌跡(10)高校卒業後を見据えた活用

筑波大学教授 藤田 晃之

文科省は2016年度から開始した「大学入学者選抜改革推進委託事業」で、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価するためのシステム構築の部門を設けている。

その部門を担当した関西大学を中心とするグループは「学びの成果やプロセスをeポートフォリオに蓄積し、これを各大学が入学者選抜で評価することが考えられる」との着想の下、「高校段階でのeポートフォリオとインターネットによる出願のシステムの構築」を進めてきた。その成果を基盤に「JAPAN e-Portfolio」が運営されている。

このような動向から「キャリア・パスポート」が電子化され、この「eポートフォリオ」に統合されるとの臆測も一部にあるようだ。だが現実は異なる。この点は、文科省の3月29日付の事務連絡「『キャリア・パスポート』例示資料等について」で「『キャリア・パスポート』は自己評価、学習活動であり、そのまま学習評価とすることは適切でない」と示している点からも、両者の目的や性格が異なることは明白である。

滋賀県のキャリアノート「夢の手帖」(高校生版)のワークシート

仮に、第三者によってその優劣が判断される場合、キャリア・パスポートの内容は評価者の視点を意識したものにならざるを得ない。学習や活動を通じた葛藤、悩みを含む自己の内面が記述しにくくなり、結果的に、第三者による肯定的な評価が得られる成果だけが選択・記録される可能性が高まる。

現時点で、大学入試出願用の「学びのデータ」を蓄積するeポートフォリオと、学習状況やキャリア形成の過程を自ら評価し、主体的に学びに向かう力や自己実現につなげるキャリア・パスポートは一線を画する。無論、学習や経験の記録という点で共通する二つの仕組みの相互関係については十分な議論が必要だが、それは今後の課題である。

現在、学生の自己理解や将来の展望に生かすため、在学中の学びや活動を記録するポートフォリオを導入している大学は少なくない。

例えば、筑波大学は入学時に「つくばキャリアポートフォリオ(CARIO)」が全学生に配布され、卒業までの継続的な活用が推奨されている。キャリア・パスポートが普及・定着すれば「高校までのキャリア・パスポートの記録を振り返ろう」と新たなワークシートが設けられ、初年次科目の一環として活用されるようになるだろう。

就労の場面でも、厚労省が提唱・推奨している「ジョブ・カード」への接続なども今後期待されるところである。

(おわり)