新たな時代のキャリア教育(7)地域発―愛媛県伊予市の事例

認定NPO法人キーパーソン21代表理事 朝山 あつこ

愛知県伊予市の中山地域にある佐礼谷小学校(児童数15人)と中山小学校(同59人)、中山中学校の3校は、深刻な人口減少の影響から統廃合の可能性もある学校です。そうした状況にありながらも同地域は、コミュニティ・スクールの全国的な展開に先駆け、一丸となって「小中学校を中心とした教育」に取り組んでいます。

中山地域とのご縁は、地域おこし協力隊の逢沢亜月さんとのつながりから始まりました。都心に比べ選択肢が少ないといわれる地域において、どうやって子どもたちのチャレンジ精神を養えるのか、と問題意識を持っていた逢沢さんは、「チャレンジは町の一人一人のわくわくエンジンを認めるところから生まれるのではないか」という考えに至りました。

伊予市立中山小の宮岡校長(前列中央)と同市立佐礼谷小の上野校長(前列右)

その考えに、佐礼谷小学校の上野校長、中山小学校の宮岡校長をはじめとする教員、保護者、行政職員、地域の人々が共鳴し、プロジェクトを実践することになったのです。

わくわくエンジンを発見するプロセスでは、児童たちが自分の好きなものを言いながら、素直な気持ちを元に好きな理由を考え、友達と伝え合いながら深掘りしていきます。級友同士で「好き」なことを聞き合う中で自分の気持ちや理由を知り、それが互いの理解と、表面的ではない深い対話につながっていきます。

善しあしも優劣もなく、ただ、子どもたちが自分のことを素直に深く語り合える空間が生まれます。正解を求めようとする授業の中では、子どもも「こう言ったら先生は喜ぶかな」「こう言った方が正解かな」などと考えてしまいがちですが、周りの反応や視線にとらわれることなく、素の自分で対話できたとき、初めて主体的・対話的で深い学びを体感できるのです。

子どもたちの様子をじっと見守っていた両校の校長は「自分の好きなものを言い合い、なぜ? どうして? と聞き合うことを通して自分を知り、最後まで途切れることなく対話が続いていて驚いた。子どもにとっても大人にとっても、互いを認め合う素晴らしい時間だった」。

さらには「これこそ、新学習指導要領にある主体的・対話的で深い学びの時間だったと思う。日頃から『主体的で深い話はコミュニケーションし尽くすことが大切』と感じていた。今日、子どもたちはまさにそれを実践し、体験することができた」と話してくれました。

今年度は中山中学校の生徒たちにも、わくわくエンジンの発見を体感してもらう予定です。