新たな時代のキャリア教育(9)島根県・江津高校の事例

認定NPO法人キーパーソン21代表理事 朝山 あつこ

少し前、島根県江津市の県立江津高校の宮島忠史校長から、達筆な手紙が届きました。「江津高校の生徒たちは、豊かな自然の中で育った素直で素晴らしい子たちです。江津高校は今、新しい時代に適応できるよう『脱皮』を旗印に歩んでいます。それには今の教育に何かが足りない。その何かを発見するための起爆の機会を見いだしたいと思っています」。

宮島校長との出会いは、江津市の教育魅力化推進プロデューサーである江上尚さんが、キーパーソン21の教育プログラム「わくわくエンジン」の存在を知るところから始まりました。

江上さんは江津市のスローガン「GO?GOTSU! 山陰の創造力特区へ」を引き合いに、「わくわくする市民が増えれば、きっと創造力特区に近付いていくはず」と、プログラムへの期待を話してくれました。

 

教員同士の熱心な話し合いも進んだ

宮島校長の生徒への思い、江上さんの考える教育魅力化戦略、キーパーソン21の教育メソッドという三つの本気が重なり、「江津市にわくわくエンジンをインストールしよう」というプロジェクトにつながりました。

プロジェクトは2018年8月31日、同校の創立60周年記念文化祭で1年生57人が、自らのわくわくエンジンを発見する体験から始まりました。生徒たちは「江津伝統の神楽」「波の音」「彼女」など好きなものを次々と挙げ、なぜ好きなのか、その理由を探ります。

「夢中で取り組むこと」「困っている人を助けること」「人と関わること」など、それぞれが気付いたわくわくエンジンを発表するたびに、一人一人の内から湧き上がるようなパワーが感じられ、聞いている級友たちからも「おー、すげえ!」と敬意と親しみがこもった感嘆の声が上がりました。

プログラム終了後のディスカッションでは、わくわくエンジンを江津にインストールするにはどうすればよいか、教師たちからさまざまなアイデアが飛び交いました。

「上級生が下級生のわくわくエンジンを引き出してみては」「わくわくエンジンで見つけた思いを元に活動し成長する生徒像をモデルに、中学生への説明会でプレゼンするのはどうか」――その様子はまさに、学校を中心に教員と地域が共に考え協働する実践だと思いました。

今年度からは本格的に、江津市の小中高校の教育にわくわくエンジンを「OS」としてインストールしていきます。果たして、どんな化学反応が起こるでしょうか。