通常学級における教育のユニバーサルデザイン(3)「成長の時間軸」を実感させる授業

星槎大学大学院教授 阿部 利彦

教師が児童や生徒に求めるものは、授業中ただおとなしく席に座っていることではないと思います。授業を終えたとき、子どもたちに何かしらの変容が見られるよう願いながら、授業をされているのではないでしょうか。

子どもたちは考えたり、感じたり、気付いたりする経験を通じて、授業のたびに少しずつ新しい自分になっていくわけです。知らなかったことを知れたり、分からなかったことが分かるようになったり、できなかったことができるようになったり、授業でそういう体験を繰り返していくうちに、「成長の時間軸」とでもいうべきものを子どもたち自身が実感できるようになります。この成長の時間軸こそが、子どもたちの自尊感情を支える重要な要素なのです。

より多くの児童・生徒に学ぶ喜びを実感させるとともに、彼らの自尊感情を育むもの、それが「授業のユニバーサルデザイン化」であると私は考えます。さらには、教室という場で仲間の多様な考えに触れることで、仲間がいたからこそより深く理解できたという実感、仲間と共に学ぶよさを体験できる場にしていくことを目指しています。

授業をそのような場にするためには、クラスの人的環境も大変重要です。例えば、誰かの間違いや失敗を笑ったり、ばかにしたりするような雰囲気のクラスでは、子どもたちは失敗を恐れ、自分の考えを述べるのをためらうでしょう。そんなクラスの授業は、勉強ができる子の意見に従うだけの消極的なものになってしまう恐れがあります。

だからこそ、前回述べたような、お互いのいいところを認め合えるクラスの雰囲気や、「ここが分かりません」「もう少しヒントをください」と援助を求めやすい環境づくり――「あたたかいクラスづくり」が必要になるのです。

そして「分からない」「できない」に正直になれるクラス、「学校は間違えるところだ」という言葉を大事にできるクラスづくりをすると、子どもたちは仲間の意見に共感的になり、多様な意見を共有化できるようになります。まずは話し合いではなく、聞き合いの風土を作っていくべきなのです。

授業のユニバーサルデザイン化は、どの子どもも置いていかれることなく、しかもそれぞれが自分のペースで変容できる授業のための工夫だと言えるでしょう。そのために教師は、自分のクラスの子どもたちそれぞれのよさと学びのつまずきを押さえておかなければなりません。