『自律型学習者』を育てる学校改革(7)みんながハッピーであること

新渡戸文化小中高校教諭 山本 崇雄

前回は生徒の自律を促しながら、関わる人々との関係性(リレーションシップ)を向上させるスキルであるパブリック・リレーションズを紹介しました。パブリック・リレーションズの3つのキーワード、「倫理観」「双方向コミュニケーション」「自己修正」のうち、今回は「倫理観」について詳しくお話しします。

パブリック・リレーションズの第一人者である井之上喬氏は「倫理観について現代のパブリック・リレーションズでは、ジェレミー・ベンサムの功利主義(utilitarianism)「最大多数の最大幸福」とマイノリティ(貧しい人や弱い人)に対して義務感をもって手を差し伸べなければならないとするエマニュエル・カントの義務論(deontology)との補完関係の上に成り立っている」と定義しています。この概念をそのまま生徒に理解させるのは難しいでしょう。そこで、倫理観を「みんながハッピーであること」という分かりやすい言葉にしました。

生徒が関わるステークホルダー

この「みんな」は生徒が関わるステークホルダーを指します。学校内では「先生」「校長先生」「主事さん」「給食主事さん」「クラスメート」「先輩」「後輩」、学校外では「他校の先生、生徒」「教育委員会」「塾の先生」「保護者」「親戚」「地域住民」……と、無数に広がっていきます。

自分をメタ認知し、「みんな」をハッピーにするかどうかという観点で、自分の言動をコントロールしていきます。学校にはさまざまな校則がありますが、「みんながハッピーであること」に基づいた行動ができれば、細かい校則は不要になるのではないでしょうか。

さらに大切なのは「みんな」にはマイノリティーも含まれているという点です。学校ではよく多数決で物事を決める習慣がありますが、少人数の意見にも耳を傾け、最上位目標達成のために対等に対話を重ねることが重要です。忙しい学校現場ではついつい多数決で決めてしまう場面も多いでしょう。しかし、それによって、少人数だから「どうせ言っても無駄だ」という意識が芽生えてしまいます。

子供たちに新たな発想を促し、自由に意見を言う土台として倫理観を元に言動をコントロールできることが、自律型学習者の土台になると考えています。