通常学級における教育のユニバーサルデザイン(4) 授業への出合わせ方を工夫する

星槎大学大学院教授 阿部 利彦

「授業のユニバーサルデザイン」についての誤解はまだあります。授業を簡単な内容にすることがユニバーサルデザイン化だという誤解です。簡単にするだけでは、面白い授業はつくれません。

子どもたちは、授業の冒頭に疑問を持ち、それが解決できたときにスッキリ感を味わうことができます。何も引っ掛かりがないのに「そうか!」「分かった!」という喜びは生まれません。分かりそうなのに分からない、知っているはずなのにどこか違う、というモヤモヤ感が、問題解決に向かう主体性を生むのです。ですから、あえて気にさせる、引っ掛かりをつくるよう「仕掛け」を授業に組み込みます。

つまり、授業の冒頭に「あれ?」「どうして?」「なんだかおかしいな」と思わせるような仕掛けを使って、子どもたちと授業の出合わせ方を工夫し、覚醒させるわけです。その一つに、文章の一部にわざと間違いを入れる「ダウトの仕掛け」というものがあります。違いに敏感な子ども(例えば自閉スペクトラム症の子ども)は、その同一性保持の特徴から、いち早く間違いに気付くでしょう。あえて段落を入れ替える、余計な一文を入れる、年号を変えるといった方法があります。

授業のユニバーサルデザインでは「視覚化が重要」とも言われますが、絵や写真、動画をただ見せるだけが視覚化ではありません。授業のポイントに注目できるような工夫が必要でしょうし、国語なら「物語の展開に合わせて挿絵を順番に並べ変える」といった活動を盛り込むこともあります。

毎回全ての授業に仕掛けを入れるのは難しいでしょうから、授業の準備で「これはダウトが使えそうだ」「並べ替えが効果的だ」と感じたときに、試してみていただきたいと思います。

授業との出合わせ方を工夫することにより、「不思議だな」「面白そう」「考えてみたい」という気持ちを喚起するのが狙いです。単なる間違い探しや、英語で活用するセンテンスカード、挿絵の並べ替えに終わらせず、そのことによって子どもたちが大切なところに気付けるように仕掛けをつくるわけです。

それらの工夫を盛り込むことによって、子どもたちは、教科書で何度も見ていたのに見えていなかった学習の「よさ」を発見でき、先生から聞いていたのに聞こえていなかった「大事なこと」が聞こえるようになるでしょう。