通常学級における教育のユニバーサルデザイン(5)授業のユニバーサルデザインにおける視覚化

星槎大学大学院教授 阿部 利彦

前回も少し触れましたが、ただ絵や写真を見せるだけでは、授業のユニバーサルデザインにおける視覚化と言えません。 視覚化する際に重要なのは、着眼点を明確にすることです。ただ、学びにつまずきがある子どもは、着目してほしいポイントに自然に目を向けさせるのが難しく、自身が気になるところばかりを見てしまうケースも少なくありません。 では「ちゃんとここを見なさい」などと強く指導すればいいのでしょうか。それだと見せられているだけで、子ども自身が見た後に感じたり、考えたり、気付いたりすることは少ないでしょう。子どもたちが主体的に見るためには、どのようにすればいいのでしょうか。 1つ目の工夫は「発見させる見せ方」です。「○○はどこにあるか」と、見つけさせる課題を提示して、探索欲求を刺激します。見つけるという課題によって、注意・集中が苦手な子どもでも楽しみながら、大事なところを探ろうとするでしょう。 2つ目は「比較させる見せ方」です。2つの絵や写真を提示して比較させます。1つの絵だと気付きにくくても、2つの絵を同時に提示することで、その共通点や相違点から気付きが生まれるでしょう。 3つ目は「不足させる見せ方」です。例えば、特に大事な部分を隠して見せないことによって、自然と気にさせる、着目させる方向付けをします。 場合によっては、パワーポイントや動画を使った「変化させる見せ方」が有効です。増えたり、減ったり、色が変わったりすることにより、子どもの記憶に残りやすくなるのです。さらに、「本物を使う見せ方」もあります。写真や映像はネットなどで気軽に見られますが、実物に触れる機会はなかなかありません。今まで映像でしか見たことがないものを目の前にして、大きさや質感、匂いをリアルに体験することにより、子どもの思考に変化が生じるわけです。 そしてもう一つ、視覚化で大事なのは「見えないものも見える化する」という考え方です。登場人物の気持ちや電流の流れ、ボールの動きなど、実際には見えない(見えにくい)ものを分かりやすく視覚化して見せることで、子どもたちのイメージが広がります。 視覚化するとイメージが限定されてしまうのでは、という心配は要りません。なぜなら、何がどうなっているのかを知らなければ、イメージが限定されるどころか、イメージすることすらできないからです。