SDGs4.7とこれからの学び~アジアの教育を見つめながら(6)安心と気付きで変容を目指す

グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)・グローバル教育プロデューサー 木村 大輔

「よく『リスクを取れ』と言われるが、シンガポールでは『リスク計算』に注目している。リスクを計算・分析することで大概のことはリスクでなくなる」――これは、前シンガポール国立教育学院のジェニファー・タン博士の言葉だ。

シンガポールらしい考え方と言えばそうかもしれない。だが「リスクを取れ」「挑戦しなさい」とやみくもに言っても、その土台となる能力や環境が整っていなければ、せっかくの成長や変容の機会を逸してしまう。では意識や行動を変容させるには、何が必要なのだろうか。

(出典)Daniel Kim “The Core Theory of Success”

まず、リスク計算など分析する力や思考力。そして何より精神的安心と、気付きを扱う機会だ。これは多くの国でファシリテーターとして研修を実施し、学生や教員、会社員などさまざまな立場の人と触れ合う中で、私自身が実感したことでもある。私が研修を担当した教員の一人は振り返りの時間に「このチームで活動するとき、安心感があった。だからこそ挑戦することができた」と話した。

安心できる場づくりとは、なれ合いの中で生まれる精神的安心ではない。各人が価値観や意見の衝突に向き合える信頼関係、相手に対する敬意の醸成を心掛ける必要がある。この関係性の質を高めることが、その後の学習効果に影響を与える。

また研修では、開発途上国や社会課題の当事者との関わりから「自分がどれだけ恵まれているのか、勉強する意味が分かった」という気付きを得て自身の日常生活を見直し、目の前の学習や仕事への取り組み方、生き方が変わったという人が数多くいた。気付きが深いほどその人の行動に影響を及ぼす。では、日常的な活動の中では何ができるだろうか。

私たちが普段から意識しているのは、▽事実とその背景にある物語をつなげる▽児童生徒の感情を丁寧に拾う▽文脈を自分と社会、世界とつなげる▽フレームワークなど大切なポイントを示す――など多岐にわたる。そして最も大切にしているのは、本質的な問いを投げ掛け、思考や対話を深掘りさせることだ。気付きのままで終わらせず、そこから自分が何を感じ、何をしたいのかまで掘り下げて考えるよう導いている。

SDGsや社会課題に関する発表の際、「○○という現状なので、○○したらいいと思います」といった、人ごとともとれる言い回しをよく耳にする。SDG4.7が醸成しようとする担い手意識は、知識や思考力だけでなく感情や行動・行為領域にも及ぶ。論理的に優れたアイデアだとしても、「それについて『あなた』は何を感じ、何をしたいのか」とフィードバックし、それぞれの内発的動機付けを促すチャレンジを続けなければならない。