通常学級における教育のユニバーサルデザイン(6)授業における「焦点化」

星槎大学大学院教授 阿部 利彦

前回述べた「視覚化」は、授業のユニバーサルデザイン化において大変ポピュラーですが、もう一つ重要な言葉があります。それが「焦点化」です。焦点化とは、授業の狙いを絞り、ポイントを明確にすることです。

視覚化は、焦点化のための手だての一つと考えることもできます。そして焦点化はすなわち、授業の山場とも言えるでしょう。授業の山場、ポイントに向かっていくそのときに、置いていかれる子どもを減らす工夫が必要になります。

授業の焦点化に関連して、今日の授業の「めあて」を冒頭に提示する、というパターンが浸透しつつあります。しかし、めあては教師から一方的に示されたものであって、子どもたちは半ば強制的にそこに向かわされているように思えます。無理に向かわされたのであれば、そこに主体性は生まれません。主体性は子供が知りたい、考えたい、探りたいと思い、自分で向かってこそ生まれるものです。

ですから授業の目指す先については、思考がアクティブになり始めた時点で子どもたちに提示することが大切です。感じたり、考えたり、疑問に思えたりするような、もやもやする視覚化の仕掛けを通して子どもたちの探求心にスイッチが入ったところで、初めて「めあて」の意味が明確になるのです。

また、焦点化では「ねらいのそぎ落とし」も必要になるでしょう。教師としてはあれもこれもと教えたくなるところですが、45~50分の中でポイントを設定し過ぎると、内容が散漫になって結局「何を伝えたかったのか」が不明確になるからです。授業では欲を出し過ぎず、先生が教えたいことを教えるというよりも、今目の前の児童生徒はどこまでたどりつけるのかを見通して、授業を組み立てていくとよいでしょう。

ここで、現場の声を紹介しましょう。学校全体で授業のユニバーサルデザイン化に取り組んでいる先生たちの言葉です。

「焦点化が大事だと思います。生徒に何を教えたいかが明確になっていないと、視覚化も共有化もポイントを外した手だてになってしまうからです」

「目の前の生徒と教科の目標を達成するための授業のユニバーサルデザインとなっているかを常に考える。そのために教師は教科の枠を超えて、皆で焦点化について共通理解を図る必要がある」

やはり焦点化というのは、授業実践の中で見えてくるものだと思います。しかも一人ではなく、校内皆で取り組むからこそ見えてくるものがあるのではないでしょうか。