通常学級における教育のユニバーサルデザイン(7)授業における「共有化」

星槎大学大学院教授 阿部 利彦

「焦点化も難しいけれど、共有化はさらに難しいね」という先生方の声を聞くことがあります。そもそも共有化とはどういったことを指すのでしょうか。

答えの一つが「クラスの仲間と考え方を共有する」ことだと思います。考え方の「よさ」の共有と言っていいかもしれません。さらにもう一点挙げるなら、私は「多様な考え方を共有する」視点を加えます。

子どもは「正解」が好きです。ですから、自分の考えが間違っていてがっかりしたり、他の子に意見を否定されたりした経験を持つ子どもは、いつでも正解を出せる特定の子の意見に追従する傾向があります。そのうち自分で考えず、正解を出せる子に考えることを任せてしまうようになります。「どうせ間違っている」「考えても無駄だ」「自分の意見など取り上げてもらえない」と思うようになると、子どもは授業で考えることを放棄し始めるのです。

すると教師は自分の期待する答えを必ず言ってくれる、いつも正解を出せる子ばかり指名するようになります。他の子たちは内心「分からない」と思っていても、「〇〇さんの考え方でいいですか」と教師に呼び掛けられると「いいでーす」と声を合わせて答える――このような授業のパターンが出来上がります。分かったふりが上手な子どもばかりが増えていくのです。

多様な意見を大事にできるクラス、共有化できるクラスの風土をつくるには、「分からない」「できない」に正直になれる雰囲気づくりが不可欠だと思います。また、間違いから学び合うことも忘れてはなりません。

正解だけを大事にするのではなく、そこに至るプロセスや考え方にも目を配っていく必要があります。もちろん自分の考え方だけではなく、仲間の考え方も大切にしなければなりません。

考え方を大事にするとは、相手の言葉に耳を傾け、共感の反応を示すことです。うなずいたり、メモを取ったり、「そうか」「なるほど」とつぶやいたりしながら。

ある学校では、先生が「友達の話をよく聞くとあなたの宝物が増えるんだよ」と子どもたちに伝えています。よい聞き手を育てることが、共有化の一つの柱となるでしょう。

より分かりやすく考えを伝えたい、諦めずに話したい、自分の発見を皆とシェアしたい、と考える子どもに必要なのは①伝えたい相手がいる②伝えたい見方や考え方を持っている③伝え方(のスキル)を持っている④一生懸命伝えたら「よかった」と思えた体験がある――といったことではないでしょうか。

よい聞き手がいるからこそ、よい話し手が育つ。それが共有化を促進する土台になるのです。