SDGs4.7とこれからの学び~アジアの教育を見つめながら(8)校長に必要な資質・能力

グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)・グローバル教育プロデューサー 木村 大輔

2018年からユネスコ・アジア太平洋地域教育局が主催する国際会議「Innovative School Leadership」(革新的なスクールリーダーシップ)に出席している。「SDG4.7=変容を促す教育」の実現―教育改革の推進には、学校長をはじめとするスクールリーダーの理解促進とリーダーシップが重要だからである。

その会議で、フィリピンにある東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)が14年から進めてきた、学校長に求められる資質・能力(コンピテンシー)についての調査発表があった。その内容は、日本にとっても示唆に富むものであるので紹介したい。

SEAMEOが発表した学校長に求められる資質・能力

東南アジアの学校長に求められるコンピテンシーとして①個人の能力②教育的指導力③経営に関する統率力④戦略的思考とイノベーション⑤利害関係者との調整――が挙げられている。それぞれの能力には▽可能性や課題に対する行動力▽継続的な職能開発▽カリキュラム実施や改善の指導力▽学習者中心の環境づくり▽校内資源やシステムの管理▽戦略的方向性の立案▽教育アライアンスやネットワークの構築▽関係者との協働関係を維持する能力――などが付随している。

学力だけではなく、学びに向かう姿勢や社会に対して行動を起こせる人材育成を教育目標に掲げている学校も多いだろう。生徒のコンピテンシーをどのように育成するか、議論する中で必ず出てくるのは、生徒を支える教員、その教員を支える学校長のコンピテンシーである。

アジア各国の専門家からは、「学内外との関係性の構築や教員・保護者に向けた情報発信、コミュニケーション力が不足している」「未来を見据えた革新的な戦略を持った人材がいない」という声が上がった。最も興味深かったのは、「シンガポールは能力ベースで人材を選ぶ。年次や性別は問われないし、コミュニケーションや戦略思考の能力が不十分な校長はいない」というシンガポールの専門家の言葉だった。

日本の現状はどうなっているだろうか。TALIS2018の結果を見ると、SDGsに関わる「文化的な違いへの意識を高める」「民族に対する固定観念を減らす」指導の自己評価はOECD加盟国の中で最も低い。時代の先を見据えた教育、そして持続可能な世界に向けた担い手育成を学校全体で推進するには、学校長のコンピテンシーやリーダーシップの向上が不可欠だ。