SDGs4.7とこれからの学び~アジアの教育を見つめながら(10)新しい教育と学びの本質

グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)・グローバル教育プロデューサー 木村 大輔

2016年から、アジアの教育リーダーが集まる「Bett Asia Leadership Summit」に登壇する機会をいただいている。EdTechが中心のこのサミットに参加してこの数年感じていることの一つは、STEAM教育やEdTechを用いる目的の変化だ。

16年にSDGsやグローバル・シチズンシップ教育の可能性について話したときと、今年の反応とが全く異なっている。EdTechやSTEAM教育の導入そのものを目的とするような意識から、世界の課題を解決していく手段としてこれらを活用し、価値観の醸成や人格形成を図っていこうという流れになっていた。教育大臣パネルディスカッションでも、「人間性を養うための教育」の重要性が指摘された。

これまでもEdTechは知識や思考力を育むだけではなく、へき地や学校に通えない子供たちに教育機会を提供するイノベーションを生み出してきた。

今EdTechの領域は▽特別支援教育(学習障害のある子がプログラミングに挑戦して忍耐力を養いスキルを習得する)▽VRと生命科学▽国境を超えて人の感情や情意領域を扱う――に広がっている。また、子供たちの国際的なロボットコンテスト、WROにおいてもSDGsに関わる社会問題をテーマに設定している。

深い学び・変容を導くには、テクノロジーや他教科を活用する想像力と工夫、浮かんできた純粋な問いから出る気付きが重要だ。

アジア・ソサエティは生徒のグローバルコンピテンシーを高めるために、PBLや総合学習の中で▽生徒が選択する▽本物の題材を扱う▽地球規模の重要性とつなげる▽実社会に向けた発表・実践――といったポイントを挙げ、日々の授業を工夫し、想像力を形にするためにICTやアートを活用するよう提案している。

問いや思考の応用については、前オックスフォード大学総長アンドリュー・ハミルトン教授が興味深い発言をしている。学生時代に歴史を専攻していたという中国の大手IT企業・テンセントのミッチェル首席戦略投資官を引き合いに、「彼は、日々の業務にローマ帝国崩壊の知識を使っているわけではない。ただ、ローマ帝国という一つのテーマ(問い)を深く突き詰め学ぶことで、考え、分析するという知的な技法を学び、対象が変わった今もそれを生かしている」と話している。

より良い世界を創る志を育成するには、こうした工夫に加え、人としての本質に関わる「人に心から感謝する」「貢献する」「共創する」ことを学ぶのが不可欠だ。これらは、GiFTが向き合ってきた生徒の言葉の一部だ。深いレベルでの信頼や優しさ、寛容性を得ることで人は垣根を越え、平和で持続可能な世界を創っていけると信じている。

教育を通して、18番目、19番目の世界のゴールを日本からも発信し、貢献していきたい。

(おわり)