神戸市立桃山台中学校校長 福本 靖
最近、PTAの在り方を問う記事や情報が、マスコミやSNS上で盛んに取り上げられるようになりました。PTAに関する問題点を指摘する声や動きは何年も前からありましたが、ここにきて急速に拡大し、大きなうねりとなってきています。加入の強制、個人情報の管理、会費納入方法や使途など、さまざまな課題が一気に噴き出したように感じます。これまで「任意団体だから……」と静観していた行政も、一部で「これ以上放置できない」と「PTAの手引書」を作成するなど一定の関与に踏み切ったり、4月の統一地方選ではこの問題を首長選挙の公約にする候補が当選したりと、動きも活発になってきています。
PTAの歴史的経緯や法律的位置付けから判断すると、現在、問題点として指摘されている課題のほとんどは早急に改善されるべきものであり、すでに議論の余地はなくなっています。今後、多くの学校では、いかに混乱なく改革するかに焦点が移っていくと思われます。
このようにPTA活動が大きな曲がり角に差し掛かり、その根本的な在り方が議論されるようになったからこそ、私が前任校で取り組んだ活動内容の大幅な見直しや、それによって大半の役員が立候補で決まるようになったPTA改革が、少なからず注目していただけるようになったのでしょう。
しかし、私が改革に取り組んだのは、現在のPTAが抱える問題点というより、学校が抱える課題に対応するためでした。新たな学校運営の在り方を模索したことが、結果的にPTA組織や活動の大幅な変更につながりました。
今、学校現場はある意味で「大きな矛盾」にさらされています。教員の多忙化が深刻な状況であるとようやく社会に認知され、時短や負担軽減が必須課題とされる一方で、特別に配慮を要する生徒が急増し、保護者からの要望は多岐にわたります。また学力格差も拡大し続け、これまで以上に「個に応じた指導」が必要となっています。さらに、いじめ問題に象徴されるように、生徒の内面をより理解する努力も求められています。この矛盾に対応するには、教員の数が大幅に増えない限り、生徒に最も近い当事者である保護者が積極的に学校運営に参加するしか方法がないのではないかと考えたのです。
急激に変化する社会の中で、数十年間ほぼ同じ姿を維持していれば、問題が起こるのは当然であり、PTAも例外ではありません。PTA問題が拡大する中で改革に取り組むのであれば、マイナスイメージばかりが先行する消極的な受け身の改革ではなく、どうせなら、学校運営に大きな役割を担ってもらえるように工夫すべきだと思います。