学校の当たり前を見直す 教育活動のエビデンス(5) エビデンスで「授業協議会」を見直す

岐阜県養老町立養北小学校教諭 森 俊郎

ある学校の公開研究授業の後に行われた「授業協議会」での話である。このときの授業者は若い女性のB教諭だった。協議会では、B教諭の児童の発言の受け止め方について否定的な意見が出た。児童の「~だと思います」という発言に、同じ内容をそのまま「~なんだね」と繰り返す、おうむ返しのやり取りが何回か見られたためだ。参観したベテラン男性教諭は「B先生は子供の発言を繰り返していたが、あれでは、他の子供が発表する子供の発言を聞かなくなる。全く意味がない」と語気を強めて言った。B教諭は「私の指導が不十分でした」と反省していたが、同席したA教諭は「全く意味がなかったとまで言えるのだろうか」と疑問に思った。

こうした場面でも、エビデンスの活用は効果的だ。

「児童の発言に対する教師の繰り返し」に関するエビデンスを検索してみると、大規模な調査研究ではないが「リヴォイス」に関する情報が手に入った※。リヴォイスとは、児童の発言を教師が繰り返す指導法である。

教師のリヴォイスは、特に話を聞き取ることが難しい児童にとって、他の児童の発言内容の理解に役立ち、児童同士の「聴き合い」を促進する効果があると記述されていた。また発言した児童には、教師に聞き入れてもらったという安心感がもたらされるという。一方、授業中の話し合い活動のルールを確立させることで、リヴォイスの頻度が少なくなってくるとの記述もあった。

そこでA教諭は、「リヴォイスには一定の効果がある。さらに話し合いのルールを確立し、実践を積み重ねていくことで、授業改善につながるのではないか」と考えた。現にA教諭が参観した学級の児童は、B教諭のリヴォイスで理解を深めている様子だった。

協議会終了後、A教諭は授業公開したB教諭をねぎらいつつ、リヴォイスの一定の効果と、その効果を感じさせた児童の姿を伝えた。B教諭は、ベテランから強く言われて言い返せなかったと返答しながら、自分の指導の改善点を振り返った。

協議会では「言い過ぎ現象」と呼ばれる発言がある。また、授業内容の評価が「声の大きな発言」に流されてしまうこともある。しかし、このように適切な情報を獲得できれば、冷静に授業の成果と改善点を振り返ることができる。授業には100点も0点もないが、そこにエビデンスは存在してほしい。

※執筆に当たり、一柳智紀(2009)「物語文読解の授業談話における『聴き合い』の検討・児童の発言と直後再生記述の分析から」(発達心理学研究 20(4)pp437-446)を参考にした。