【給特法】給特法の特殊ルールを巡る法的問題

埼玉大学准教授 髙橋哲

給特法の5つの特徴

第2回は、公立学校教員の勤務時間管理に関する特殊ルールを定めた「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の概要と、その問題について論じる。

給特法の特徴はおおむね、以下のようにまとめられる。

第一に、給特法は第3条1項において給料月額に対して4%の「教職調整額」の支給を定めた上で、第二に、教育職員については、労基法上の「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」(3条2項)と定めている。

その上で、第三に「教育職員…(中略)…を正規の勤務時間…を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る」(第6条)として、命じうる時間外勤務を限定している。

この条文を受けて定められた政令では、教員に命じることのできる時間外勤務として①生徒の実習②学校行事③教職員会議④非常災害などのやむを得ない場合に必要な業務――という、いわゆる「限定4項目」を掲げている。

第四に、この政令は限定4項目以外の業務について「原則として時間外勤務…を命じない」とし、時間外勤務命令を禁じている。

なお、限定4項目であっても、時間外勤務を命じる場合には労基法上の根拠が必要となる。給特法は、第五の特徴として、第5条で地方公務員法58条3項を読み替えて、本来は教員を対象としていないはずの労基法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」という時間外労働の特例を適用している。

これにより、教員には「三六協定」を経ずに時間外労働をさせる特殊ルールが採用され、労基法の基本ルールである①時間外労働に対する労働当事者の同意②当該労働時間への割増賃金③ルール違反への罰則という時間外労働を抑制するための機能――が剥奪されている。

文科省解釈の大きな矛盾

給特法は、法形式上、労基法33条3項に基づいて限定4項目の時間外勤務を認め、それ以外の時間外勤務命令を禁止する体裁を取っている。しかしながら、実際には、教員の時間外勤務の多くは、限定4項目「以外」の業務によって占められている。

文科省はこれまで、このような限定4項目以外の業務に関して、「超勤4項目以外の勤務時間外の業務は、超勤4項目の変更をしない限り、業務内容の内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない。…教職員の自発的行為に対しては、公費支給はなじまない」(2006年11月10日、中教審「教職員給与の在り方に関するワーキンググループ」第8回資料5)と説明してきたのである。

このように限定4項目以外の業務を「自発的行為」として処理してきたことにより、実態として存在する時間外勤務の多くが、無定量な「タダ働き」と化してきたのである。

しかし、この文科省の解釈には大きな矛盾が存在している。その一つが、休日の部活動指導などに支給される「教員特殊業務手当」の存在である。

例えば、東京都の「学校職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則」によると、休日に行われた対外運動競技などの指導業務には日額5200円、部活動の指導業務には日額3000円が支給されている。これは、限定4項目以外の業務を「自発的行為」とし、「公費支給はなじまない」とする文科省の給特法解釈から大きく逸脱する。

もし、休日の部活動の指導や引率が「業務」とみなされるならば、休日手当が支給されるべきであり、また逆に「自発的行為」とみるならば、教員が行う私的事業に公金を支出することは法的に問題である。

もう一つ、給特法の特殊ルールの正当性を危うくしているのが、教職調整額を減額する自治体の存在である。例えば、東京都では、それまで一律4%の教職調整額が支給されていたのに対して、2005年に「教職調整額に関する規則」が改定されてから、「都教委の定める研修を受講する者」については教職調整額が2%、「指導力不足教員に該当すると認定された者」については1%を支給するとされた。

横浜市でも2008年以降、休職者、長期研修、指導改善研修にある者は教職調整額が1%とされている。教職調整額の「4%」は、労基法上の超勤手当の代償措置としての性質を持つ以上、その支給率を満たしていないことは労基法違反のそしりを免れない。これらの自治体の存在は、給特法の存立基盤がすでに崩れていることを示している。

次回では、このような矛盾だらけの給特法に対して、今年1月25日に公表された中教審「学校における働き方改革」答申が示した、教員の勤務時間管理に関する提言を検討する。


プロフィール

髙橋哲(たかはし・さとし) 埼玉大学教育学部准教授。 東北大学大学院教育学研究科修了・博士(教育学)。専門は教育法学。著書に『現代米国の教員団体と教育労働法制改革―公立学校教員の労働基本権と専門職性をめぐる相克―』(風間書房、2011年)、同「教職員の多忙化をめぐる法的問題―給特法の構造、解釈、運用の問題―」『法学セミナー』(773号、2019年)など。教育法、労働法の観点から給特法の法的問題を指摘する。

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