【新たな英語学習のアプローチ(2)】CLIL展開のバリエーション

上智大学言語教育研究センター非常勤講師 山ノ内 麻美

前回、CLILは教科や社会的テーマについて学習するために、英語を「道具」として用いる教育法だと説明した。では、英語を使って教科学習を進めるイマージョン教育とは、どのような違いがあるのだろうか。

CLILの全体像をつかむために、理論上の位置付けを他の教育法と合わせて示した(図)。左側に進むほど、英語の言語形式を学習して文法や語彙(ごい)の定着を目指す性質がある。一方、右側に進むほど言語教育はほとんどせず、母語のように自然な言語習得を目指して、学校生活そのものを英語漬けにするスタイルとなる。

CLILはその中間に位置する。つまり、イマージョン教育と同じように英語で教科を学ぶが、文法や語彙など言語教育の視点も備わっているのだ。さらにCLILには、教科学習に重きを置いた授業があれば、英語の授業の中で一つのテーマを深く掘り下げ学習するケースもあり、児童生徒のニーズに合わせて柔軟に対応できる。この柔軟さが、国や学習環境の違いを超え、数多くの学校現場への導入を可能にしている。

さまざまな教育法とCLILの位置付け

もう少し詳しく、その展開バリエーションに触れていこう。CLILの展開は大きく「Hard CLIL(強系)」と「Soft CLIL(弱系)」の2つに分かれる。「Hard CLIL」は、授業は終始CLILの教育法に基づいて展開し、週に数回の頻度で実施する。理科や歴史などの教科も原則、全て目標言語(英語)を用いて指導する。一方「Soft CLIL(弱系)」は、英語の授業の中で部分的にCLILの要素を取り入れる。英語、日本語の両方を使用し、頻度も学期ごとに数回と少ないのが特徴だ。

現在の日本の小・中・高校でCLILを取り入れるのであれば、まずはSoft CLILが現実的な選択だろう。その場合はなるべく定期的にまとまった時間をとり、授業を展開するとよい。英語をメインに、必要に応じて日本語を使用するアプローチを取り入れると、よりCLILの学習効果を実感できるはずだ。

幅広い展開が可能なCLILだが、授業に取り入れる前に、核となる枠組みをしっかり把握しておきたい。枠組みとは▽Content(内容)▽Communication(言語)▽Cognition(思考)▽Community / Culture(協学)――の「4つのC」である。指導案作成や教材準備、授業中の指導、評価においてこの4つのCを意識すると、児童生徒の学びの質が担保される。

参考文献:『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業~生徒の主体性を伸ばす授業の提案~』(和泉伸一著、アルク)

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