【新たな英語学習のアプローチ(5)】CLILの言語指導・対話と母語活用

上智大学言語教育研究センター非常勤講師 山ノ内 麻美

CLILでは教師が一方的に話し続ける授業スタイルではなく、教師対学習者(児童生徒)、または学習者同士の対話を重要視する。対話する中で言語力が育まれていくと考えるからだ。

もちろん学習内容や課題の詳細は教師が主となって説明を授けるが、英語力向上や内容理解、そして思考力の促進には学習者の主体的な取り組みが必須だ。そのために正解のない問いを投げ掛けたり、学習者同士が話し合う機会を設けたりすることが鍵となる。

では、活発な対話を生むにはどのような働き掛けをすればよいだろうか。教師対学習者、学習者同士いずれのケースにおいても▽詳しく説明する▽理由を聞く▽具体例を挙げる▽経験を語る▽経験、意見を語る――発話を練習させ、習慣付けるとよいだろう。

学習者には「You mentioned that~」「I agree with you about~」「I didn’t understand your point about~, Could you give us an example ?」――といった表現例を提示し、相手の意見を要約してから、それに対する自分の意見や質問を述べる練習をさせる。いきなり自分の意見を発するのと比べ、枕ことばがあるぶん精神的負荷が下げられるのだ。

ここで、こうした意見交換を最初から全部英語で行うのか、という疑問が湧くかもしれない。CLILは内容学習と同様、英語力の育成を主眼に置いている。そのため英語で豊富なインプットを与え、インタラクション(相互作用)を促し、アウトプットの機会を設けることが大切だ。

一方でCLILには「Translanguaging」という、母語を計画的、積極的に活用する考え方がある。難易度の高い内容や高度な思考力が必要な課題について、いきなり英語で発話するのは容易ではないからだ。

授業では、1回目の話し合いを日本語で行い、英語の表現例を提示して練習させる。2回目の話し合いは英語で行う。練習は日本語、発表は英語という流れをつくっておくと、学習者が初回は内容に焦点を当て、2回目は英語に意識を向けて取り組むことができる。

また、授業の最初から英語で発話するのが難しいようなら、「May I use Japanese ?」と許可を取れば日本語が使えるルールを決めておいてもいい。その場合、2回目からは英語で挑戦するよう促しておけば、なし崩しに日本語を使う状況からも免れる。

CLILでは、このように安心感のある授業づくりが非常に大切であり、そのような環境下でこそ学習者の対話が活性化される。

参考文献:『CLIL(内容言語統合型学習)上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第3巻:授業と教材』(池田真、渡部良典、和泉伸一著、上智大学出版)

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