【IN-Child(6)】 望むは、教員のリーダーシップ

琉球大学教育学部教授 韓 昌完

私は、教育分野一筋の研究者ではない。今までに2つの博士号を取得したが、一つは医学分野(障害科学)、そしてもう一つが経営学分野である。だが他分野だからこそ、勉強してきたことや経験してきたことの全てを教育に生かす自信がある。

「学級経営」とは、「学級」という教育活動の単位において、「経営」学的手法を用いることである。大別して①条件整備②教育経営③秩序維持――の3つの観点で語られることが多いが、今回はその中から、教育経営を取り上げてみる。

教育経営の要は、日々教員が子どもたちの活動を統合し、そこに付加価値を生み出すことだ。そのために、教員には子どもたちを率いる適切なリーダーシップが求められる。ボスではなくリーダーである。では、適切なリーダーシップに必要な素養とは具体的にどのようなものだろうか。

女子高生が野球部を強くするのにドラッカーを使った本で一躍社会的認知が広がった「マネジメント」は、学級経営にも存在する。教員が学級のリーダーとして行う「チームマネジメント」である。子どもたちの特徴を把握することで彼らの強みを生かし、かつ弱みを補う適材適所の配置や、必要な教育的支援の提供が可能になり、子どもたちのニーズに応える教育につながる。

ベテラン教員は、長年の経験と勘によって子どもを見る目が培われており、その多くは自然にチームマネジメントを実践している。経験の浅い教員がすぐに真似できるものではないが、学級のチームマネジメントには、何よりも子どもを見る目が求められる。

IN-Child Record(ICR)は、そんな「教員の目」を助けることができると考えている。14領域82項目で構成されているICRは、その項目の多さから初見の人に眉をひそめられもしたが、慣れれば5分もかからずにできるようになるのを多くの教員が証明してくれた。

ICRでニーズが特に高い領域にあった子は、適切な支援がなければ自分一人で成果を出すのは難しいかもしれない。しかし、きちんとニーズに応えれば、想像以上の成果を上げる可能性を秘めている。

逆に、普段他者の介入なしに成果を出せる子どもであっても、隠れたニーズに本人を含め誰も気が付いていない場合、そのニーズをICRですくい取ることができる。ベテラン教員の経験と勘を、ICRは科学を通して教えてくれるのだ。子どもの特徴とニーズを適切に捉えるのに必要な視点が明確になれば、個人の能力や経験年数による差を縮められるのではないかと期待している。

学級経営は、教室環境や学級ルールの整備など、子どもの目に映る部分だけではない。目には見えない教員の適切なリーダーシップが、確実に子どもたちのパフォーマンスを引き上げる力になっていると信じてほしい。「あの先生だからできること」で終わらせないためにも。

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