【IN-Child(7)】「ニーズ」に基づく教育

琉球大学教育学部教授 韓 昌完

学期末に渡される成績表を開く瞬間。自分に対する評価に、ある者は期待し、ある者は鬱々(うつうつ)とする。学校の成績は、受けた試験の点数から算出され、明確な段階(数字やアルファベット、記号など)となって示されていた。そして多くの場面において、われわれは成績の優劣によって「勝者」と「敗者」に分けられた。

ある研究によれば、教員業務の観察から、成績表は点数で埋めなければならないという結論に至ったそうだ。つまり、子どもや保護者、校長などに報告する際、点数以外に客観的で正当な基準はなく、子どもに課題を遂行させるのに点数以上に良い材料がない。しかし、利便性(大人の事情)を求めたこの方法が、子どもへの教育成果を反映しているのかという疑問が残る。

学校環境の急激な変化と児童生徒の多様化により、個々のニーズや特徴に合わせた教育が喫緊の課題となっている。

教員は、子どもたちの学習準備の度合いや興味関心だけでなく、個々の学習ニーズ、成長環境、文化的背景、身体的・情緒的背景の特徴などに合わせて、標準化された目標の教育を実践するよう求められており、その負担は大きくなった。個々のニーズや特徴のスペクトラムが、以前よりもはるかに多様化しているからだ。

しかし、体系化された明確な教授法があるわけではない。子どもたちを集団として見るのではなく、「個々の人間」であることを忘れないようにしなければならない。

「どの子も置き去りにしない法」(No Child Left Behind Act)は、▽所得▽人種▽障害▽英語学習者(英語を母語としない者)――に基づく学力格差を是正するため、2002年に制定された米国の連邦教育法である。

この法律では、教育行政、ならびに各学校の結果責任を厳しく求めており、実施に際しては賛否両論あった。しかし、注目すべきは「個人の背景やニーズによる学力格差」に目を向けた点ではないだろうか。

ある学者は「学習の一番の妨害となるのは、失敗への恐怖や羞恥心によって困難に見える課題から逃げようとすることだ」と言う。そして、大人は自身の経験を元に児童生徒と恐怖に向き合い、共に話し合うべきであるとも。

大人は子どもの頃の自分をどのくらい覚えているだろうか。忘れているだけで、多くの失敗を乗り越えてきているはずだ。子どもが失敗を恐れず、人生の課題解決の局面から逃げずに立ち向かっていく力を育てるのが教育であり、その解決方法が背景によって違うのは当たり前である。

背景を考慮せず、一斉に行われる試験の点数だけで決まる成果は不十分であるし、正確な評価にならないのではないか。世界的にニーズベースの教育が大きな流れになってきている中、日本とてその例外ではないだろう。

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