【新たな英語学習のアプローチ(7)】CLIL型授業の流れ

上智大学言語教育研究センター非常勤講師 山ノ内 麻美

授業設計ができたら、次は構成を考えてみよう。「固定観念」をテーマに、私が実際に行った大学1年生の必修英語の授業を例に、図に沿って展開の過程を説明する。

1.言語、視覚、数字を使って背景知識の活性化

授業の冒頭、学生に「親戚に女の子が生まれたので人形をプレゼントしたい。どのような人形をイメージするか、絵を描き色を塗ろう」と呼び掛け作業した。この後、「肌色」という色は日本にしかないこと、米国で売っている人形は肌の色のバリエーションが豊富なことを、写真を見せつつ説明した。その上で「私たちは生まれ育った環境によって、固定観念がつくられるのではないか」という問いを投げ掛けた。

【ポイント】

最も大切にしたいのは、「楽しい授業が始まりそうだ」と学習者の期待を高めることだ。テーマを身近に、自分ごととして捉えてもらうことで学びの質は高まる。そのためには、学習者がすでに持っている背景知識(スキーマ)を刺激するのが有効だ。

背景知識とは、学習者自身の経験(見た、聞いた、体験したことがあるか)や知識・意見(どう思うか、好きか嫌いか)、語彙(ごい:キーワードの英語/日本語の意味)を指す。テーマに関する映像や統計の視覚情報も興味喚起の一助となる。

注意すべきは、最初から膨大、もしくは難解な情報を与えないことだ。学習者の意欲を損なわないよう調整する必要がある。

2.目標言語インプット

内容を理解する上で必須となる言語知識(語彙、文法、発音)や学習スキル(メモの取り方、要約の仕方)を練習する。それらは英問英答や内容正誤問題で定着を測り、図や表を活用して内容を整理する。実際の授業では固定観念の定義を確認し、子供が物語から受ける影響についてリスニングとリーディングを行い、その内容と語彙を確認した。

3.高次思考力を要するタスク

この段階で、CLILの醍醐味(だいごみ)である思考力を要するタスクを課す。授業ではグループワークを実施。親しみのあるディズニープリンセスを題材に、目や髪、肌の色、出身地、職業、特技、家庭環境、結婚するか否かを分類し考察した。

【ポイント】

一見難しいテーマでも、アプローチを工夫することで身近な問題となる。これが基礎知識から活用知識への転化を促すきっかけになるので、タスク設定は肝心だ。

4.アウトプット

ここまでに習得した学習内容や言語の知識を活用して、まとまりのある、話す・書く活動を行う。授業では、性差別の偏見があるとして「赤ずきんちゃん」など書籍200冊をバルセロナの児童図書館が撤去したというニュースを取り上げた。賛成派と反対派、両者の意見を吟味した上で、自分の考えをエッセーの形で書く課題を出した。こうした授業の流れを大切にしながら、学習者の反応を見て課題を小分けにして与えたり、学習する規模を個人やグループに変更したりと、教師が臨機応変に内容、言語を支援することがCLIL成功の鍵である。

参考文献:『CLIL内容言語統合型学習 上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第3巻 授業と教材』(池田真、渡部良典、和泉伸一著、上智大学出版)

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