【IN-Child(10)】多動性・衝動性はうまく生かせる

琉球大学教育学部教授 韓 昌完

IN-Childに関する問い合わせには、学校生活の中で不注意や多動性・衝動性のある子どもたちに関する相談がとても多い。

現在の学校システムは、着席して人の話を聞くことが基本となっているため、子どもたちの不注意や多動性・衝動性は目に付きやすい。その結果、子どもたちは家でも学校でも叱られる場面が多くなり、その経験が積み重なって自己肯定感の低下や、衝動性の強化につながるケースもみられる。

しかしながら私は、この多動性や衝動性は、人類発展の一端を担ってきたのではないだろうかと考えている。

例えば、現在地球上のあらゆる所に住んでいる人類はアフリカ大陸で誕生し、そこから世界中に広がっていったとする「アフリカ単一起源説」がある。だとしたら、大陸を最初に渡ったのはどんな人だったのか。何も分からない状況下で長距離を移動するのは、新しい土地を開拓できる利点がある一方で、さまざまな危険をはらんでおり、命の危機と直結している。それは、多動性や衝動性なくして完遂できない行動ではないかと考えてしまうのだ。

この考えを「ただ住む場所がなくなって移動しただけではないのか」と懐疑的にみる人がいるかもしれない。では、安全性も分からないまま初めて見た物を口に運び、それが食べられることを最初に確認した人はどうか。

大航海時代、先に大陸があるかも分からない不確定な状況下で、命を賭けて海へ乗り出した人はどうだろうか。人類の発展のタイミングには、さまざまな危険を顧みずに挑戦する多動性や衝動性が大きく貢献したはずである。

今の時代も、多動性や衝動性を生かして未知の地域に足を踏み入れる冒険家や、世界中を飛び回っている起業家がいる。彼らのほとんどは好奇心が旺盛で、好きなことに対していくらでも没頭できるエネルギーがある。そのような人々がいるからこそ、新しい発見や新しい取り組みがなされ社会が発展していくのだ。

学校現場においては、好きなことを一緒に見つけ、多動性や衝動性をコントロールする機会のある活動を取り入れるとよいだろう。思春期の男子は、ホルモンバランスの変化から多動性や衝動性が強くなると言われている。その発散と、社会的相互作用を理解する機会を提供するために、スポーツをさせるとよいようだ。

特に多動性・衝動性の強い子どもたちは、個別の指示が有効であるため、バスケットボールなどのグループ競技よりも、水泳やレスリング、テニスといったコーチと1対1で行えるスポーツがよい。何より友達を得たり、自分の好きなことで達成感を味わったりする機会にもなる。自己肯定感の育成にもつなげることができるのではないだろうか。

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