【探究的な問題解決能力(6)】算数・数学で統計教育

国立教育政策研究所統括研究官 坂谷内 勝

統計グラフの読み取り問題(出典:国立教育政策研究所、平成28年度全国学力・学習状況調査の調査問題小学校算数B)

小学校算数では、百分率の計算、比例関係などの数学的な考え方を取り入れて、統計教育を実践できます。新学習指導要領では、「データの活用」領域が小学校全学年に設けられ、表やグラフの正確な作り方と読み取り方に関する内容を、基本から応用まで系統的に指導できるようになりました。

中学校数学では、ヒストグラム、標本調査などの統計学的な知識や手法を取り入れて、統計教育を実践できます。新学習指導要領では、これまで高校で扱っていた四分位数・箱ひげ図を第2学年で指導することになりました。

算数・数学の統計教育の全体的な意義が、統計を活用して「問題解決をしたり意思決定をしたりすること」であるのは当然ですが、新学習指導要領で強調されているのは「物事を批判的に捉え主体的に判断すること」です。

文部科学省が実施している全国学力・学習状況調査では、統計に関する問題が毎年出題されています。図は、小学校算数の問題で使われた折れ線グラフです。問題文を要約すると次のようになります。

各学校の図書委員たちは、「物語」の貸出冊数の変化の様子を折れ線グラフにまとめました。A小学校に比べてB小学校の方が、5月から6月までの「物語」の貸出冊数の増え方が大きい(線の傾きが急であるため)という主張は正しくありません。そのわけを、グラフから読み取れる貸出冊数に着目して、言葉や数を使って書きなさい。

 

この問題は、2つの折れ線グラフの目盛りや折れ線の傾きに着目し、グラフを批判的に考察する問題です。5月から6月までの貸出冊数の増え方は、一見、折れ線の傾きが急なB小学校の方が大きいように見えます。

しかし、グラフの目盛りをよく見ると、A小学校は400冊の増加、B小学校は300冊の増加なので、A小学校の方が貸出冊数の増え方は大きいのです。

見かけの統計グラフにだまされてはいけないのです。この問題は多くの児童が正答できなかった問題の1つです。

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