【「ギフテッド」の子供たち(1)】発達障害からギフテッドに

どんぐり発達クリニック、ギフテッド研究所理事長 宮尾 益知
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Sくんは、4歳で平仮名、カタカナ、漢字が読めるようになり、興味を持った宇宙や恐竜について図鑑やインターネットで学び始めた。恐竜の名前を全て記憶しているだけでなく、惑星間の距離までも知っている。3歳のTくんは、韓国の旅客船が沈没した事故について、船がなぜ、どのように沈んだのか、どうしたら防げたのか、母に議論を持ち掛けている。

特異な才能を持った、いわゆる「ギフテッド・チャイルド(Gifted Child)」と呼ばれる子供たちは、好奇心が旺盛で話し方が他の子供と違う。驚くほどの記憶力を持ち、同年齢の子供と比べると、理解力はまるで大人のようだ。しかし、満足する答えが得られなければ、相手に対して暴力を振るい、大声で叫びだしてしまう。SくんもTくんも、小学校への進学を前に保護者が療育センターに相談し、私が院長を務める「どんぐり発達クリニック」を受診した。

ギフテッドに対する日本と海外の考え方の違いが分かる、インターネット上に投稿された興味深いやり取りを紹介する。

「息子は2歳の頃から、専門の医療機関に通っていました。知能が実年齢よりも非常に高い『ギフテッド』です。小学校では同世代の子供となじめず、ずっと孤立しています。別の子供からいじめを受けることもあり、休み時間は職員室で過ごしています。医者からは『日本にいても息子にとっていいことはない。海外のギフテッドの子供に対応した学校を紹介する』と強く勧められています。しかし、そうなれば生活環境が大きく変わるため、躊躇(ちゅうちょ)しています」

「私の息子と娘も米国でギフテッドのプログラムがある学校にいました。ギフテッドの子供同士だと、高度な会話ができて楽しそうです。高い知能に合わせてどんどん勉強を進めることができるので、とてもいいと思います。渡航が難しければ、プログラムを取り寄せて日本で受講することもできます。スタンフォード大学では、ギフテッドの子供を対象としたホームスクーリングを提供しています」

発達障害は認知の障害であり「発達障害のプラスを知ろう」という考えから、私は発達障害のある子供に特化した教育をしている翔和学園と共に「ギフテッド研究所」を設立し、医学、教育とは異なるアプローチを始めた。どんぐり発達クリニックは、開院後5年で患者数が3000人を超えた。患者の中には、いわゆる「ギフテッド」や「2E」の子供たちが100人弱存在している。連載ではこうした取り組みを通して得た医学的知見から、ギフテッドの子供について日本の教育界に提言していきたい。


【プロフィール】

みやお・ますとも 東京都生まれ。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。ギフテッド研究所を設立し、理事長も務める。『発達障害の人が働くときに知っておきたい10の基本』(河出書房新社)など著書多数。

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