【ICEモデル(1)】アクティブラーニングはこれでいいのか

京都情報大学院大学副学長・教授 土持 ゲーリー 法一
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昨年、京都大学を退職した溝上慎一教授(現・桐蔭学園理事長/トランジションセンター所長)が『大学生白書2018 いまの大学教育では学生は変えられない』(東信堂)というショッキングなタイトルの著書を刊行して話題になった。これは大学だけを改革しても何も変わらないことを暗示している。大学を改革するには、小学校から高校までの初等中等教育段階から改革すべきとの趣旨である。

アクティブラーニングには二つの側面がある。「教員」主導型と「学習者」主導型である。多くの場合「(前略)教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」とする、文科省の「アクティブ・ラーニング」の定義に沿った教員主導型である。

果たしてこれでいいのだろうか。これでは、アクティブラーニングが教室内だけの活動に限定されてしまい、学習者にアクティブラーニング「を」教えているにすぎない。アクティブラーニングを持続可能なものにするには、アクティブラーニング「で」教えるという意識改革が必要である。アクティブラーニングは全ての教科に通ずるものであり、教室外においても同じである。

アンディ・リージャー博士と筆者(2019年9月、クイーンズ大学エリスホールにて)

したがって、アクティブラーニングを促進するには、教室とは別のスペース(場所)が必要である。例えば、カナダのクイーンズ大学にあるエリスホールは、アクティブラーニング・スペースと呼ばれ、アクティブラーニングの先駆けとして世界中から注目されている。ホールの責任者であるアンディ・リージャー博士は「スイミングを教えるにはプールで教えるのがベストであるのと同じように、場所を変えて教えるのが効果的である」と指摘する。

アクティブラーニングへの関心が高まっていることは歓迎すべきである。しかし、これまでの授業や学習形態のままでは限界がある。「新しき酒(ぶどう酒)は新しき革袋に盛れ」ということわざがあるが、これは新しいぶどう酒を古い革袋に入れてしまっては、革袋が破れて酒が漏れ、袋も使い物にならなくなるため、両方とも保てるよう、新しいぶどう酒は新しい革袋に入れよ、という意味である。すなわち、新しい考え(アクティブラーニング)を取り入れるには、授業方法も学習の評価方法も新しくする必要があるということだ。


【プロフィール】

つちもち・ゲーリー・ほういち 京都情報大学院大学副学長・教授、同教育・学習革新センター長。『ポートフォリオが日本の大学を変える』(東信堂)、『社会で通用する持続可能なアクティブラーニング』(同)など著書多数。現在は、エデュケーショナル・コンサルタントとしてワークショップ、セミナー、講演なども行う。

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