【ICEモデル(2)】 アクティブラーニングと「学習パラダイム」

京都情報大学院大学副学長・教授 土持 ゲーリー 法一
この連載の一覧

米国人に「アクティブラーニングとは何か」と尋ねたら、何と答えるだろうか。恐らく、日本人が考えるようなしゃくし定規の答えは返ってこないだろう。

ただ、共通して「学生の関わり(Student Engagement)」を挙げる声は多いと思われる。なぜなら、学生の関わりは教室内外を問わず、全ての学習活動に通じるからである。

現在の日本のアクティブラーニングの動向は、1991年ごろの米国に似ている。筆者の友人でもあるジム・アイソン博士の共著『アクティブラーニング~教室の興奮を創る』(原題:Active learning: Creating excitement in the classroom)の出版を契機に、当時、米国でアクティブラーニングが大きな注目を浴びた。

しかし一向に普及せず、逆に、学校現場からは「教える内容が多すぎ、教える時間は少なすぎる」と批判された。アクティブラーニングは多くの教員から正当に評価されずにいた。

パラダイムの現状と課題(出典:「教育から学習への転換」ロバート・B・バー&ジョン・タグ『主体的学び』創刊号、東信堂)

ところが95年、米国で「学習パラダイム」が起こった。それが意味するものは、教員中心の教育から、学習者中心の学習への転換である。それまで聖域とされた学校にもメスが入り、大学と教員は学習者の学習成果について説明を求められるようになった。

学習パラダイムの提唱者であるジョン・タグ教授らが強調した点については、図を参照してもらいたい。これは学習パラダイムの進捗度を測るバロメーターとしても使える。図の「使命と目的」項目の説明からも分かるように、教育パラダイムでは知識の伝達に重点が置かれたが、学習パラダイムでは「学習を生み出すこと」に変わっている。

話を最初に戻そう。米国では2000年から、学生の関わりに焦点を当てたNSSE(National Survey of Student Engagement)と呼ばれる調査が始まった。その名の通り、学生の学習活動に関する全米規模の調査で、最近は高校生にもその結果が活用されている。すなわち、高校生はNSSEの調査項目を参考にして大学を選ぶのである。

NSSE調査項目は日本におけるアクティブラーニングを考える上でも示唆に富む内容が含まれている。ようやくパラダイム転換の必要性が叫ばれるようになったものの、従来の学校教育文化が根強い日本は、依然として教育パラダイムのままであると言わざるを得ない。そのため、学習パラダイムの評価に関する議論もあまりなされてこなかった面は否めない。

この連載の一覧