【IN-Child(12)】 1000人の子どもの1000通りの未来

琉球大学教育学部教授 韓 昌完
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子どもは、常に大きな変化の途中にある生き物である。子どもの変化量やそのエネルギーに、大人のそれは到底及ばない。また、大人が思っている以上に環境から受ける影響が大きい。そんな子どもの現在だけを見て、すぐに「障害」と決めつけてしまうことは、子どもの未来を限定してしまう危険性もはらんでいる。

第2回で述べた通り、発達障害と診断を受けた場合、精神障害者手帳が交付される。さらに、障害者基本法において障害は「継続的」なものとされている。この言葉の重さを、われわれ大人がどれほど理解しているのか、改めて問いたい。

大切なのは、変化の途中にある子どもの「今」のニーズが何かを知ることではないのか。いずれ過去となる一点ではない、変わりゆく今を捉えていくことこそが、IN-Childプロジェクトの基本となる。

IN-Childは日本だからこそ生まれ、広がりを見せているのだろう。日本の特徴を生かしたこの取り組みを、ゆくゆくは世界へ発信したいとも思っている。日本は、全国津々浦々にレールが敷かれ、電車が走っている。

こうした様子は海外では見られず、日本が「鉄道社会」と称されるゆえんだ。物事が順調に進むように前もって準備しておくことを「レールを敷く」と言うが、物理的にもシステム的にもレールを敷くのが得意な文化的特徴があるように思う。

こう言うと「個性の尊重やニーズに合わせることとは真逆ではないか」という声が聞こえてきそうである。しかし、この良さは最大限に生かすべきである。風土や生活環境、利用者のニーズに基づき細かく調整して各地にレールを敷くように、子どもの特徴や取り巻く環境、教育的ニーズに合わせて「レールを敷く力」を持っているはずである。

こうしている今も、子どもたちは刻々と変化している。子どもたちがこれから生きる未来は予測できない。だからこそ、大人が子どもの今をきちんと把握し、「未来への起点」を創ることが、日本の社会に合ったやり方なのではないか。大人の敷いたレールの上で、いずれ自立し自分の未来のレールを敷く力、まさに「生きる力」が育てられるのだ。

子どもの今を大切にし、目の前にいる子どものニーズに誠実に応えることが、レールの起点をつくることであり、子どもたちの多様な未来につながるものと確信している。また、それが当たり前になる世界をつくるために、私たち研究者は研究を続けていかなければならない。

この世界に、一人として同じ子どもはいない。1000人いれば1000通りの多様性であふれている。彼らの未来も、1000人いれば1000通り。「子どもたちが多様な未来を描けるように支えたい」、そんな気持ちで、日本からIN-Childの取り組みを進めている。

子どもたちに大きな未来を約束するため、われわれ大人は今、目の前にいる子どものニーズに誠実に応えることからはじめようではないか。

(おわり)

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