【見落としがちな道徳の本質(11)】「道徳科」の評価

東京都教職員研修センター教授 朝倉 喩美子
この連載の一覧

児童生徒の道徳性に関わる評価は2種類ある。1つは全教育活動を通じて行う道徳教育に関する評価で、学級担任が児童生徒の道徳的な行為や行動のよさ、具体的な成長を年度ごとに見とるものだ。もう1つは特別の教科・道徳の学習に対する評価で児童生徒の学習状況を捉えるものだ。

道徳性は、学校の全教育活動を通して計画的に養われる。当然、その学習状況や成長の様子に対する評価が必要となる。それが前者だ。各教科等の学習活動や学校生活などで外面に表れた行動のよい点や進歩の状況を通して適切に見とり、日常的な指導に生かす。そして指導要録の「行動の記録」欄に年度ごとに記載する。設置者の判断により、必要に応じて項目を増やすこともある。例えば、区市町村で国際理解教育や環境教育に力を入れている場合、関連する道徳的価値についての評価を加えることもある。

後者の評価においては、年間34~35時間の道徳の授業を、教科書を用いて計画的に実践し、その集積である児童生徒の変容を見とる。ここで把握すべきは学習状況や道徳性に係る成長の様子であり、個人内評価として数値ではなく記述式で評価し、通知表などで保護者に伝える。

文科省が示す資質・能力の3つの柱のうち、道徳科の学びは「学びに向かう力・人間性等」に深く関わる。そして、自己の感情や行動を自己統制する「メタ認知」に関わるものと、感性や思いやりなど人間性に関わるものとがある点に留意してほしい。

つまり、道徳科の学びは道徳性の醸成に向かうものだが、同時に子供のさまざまな学習を支えるものでもあり、一人一人の自己実現を可能にする豊かな力として徐々に備わるものでもあるということだ。道徳科の学習を工夫し大事に積み重ねる教師の学級で、子供が他教科等の学習にも意欲的に取り組み、好成績を得るようになることが多いのは、そのためだと思われる。

そうした道徳科の評価では、一定のまとまりの中で、児童生徒が学習の見通しを立てたり、学習したことを振り返ったりする活動を適切に設定し、取り組み状況を具体的に見とることが求められる。評価するに当たって、特に注目すべき視点は4つある。

①他者の考え方や議論に触れ自律的に思考する中で、多面的・多角的な見方へ発展させているか見とる。

②多面的・多角的な思考の中で、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているか把握する。

③発言や記述ではない形で表出する姿に着目する。

④学期や年間を通じた変容を見とる。

その際、留意したいのは以下の点だ。

○記述式で表現する際には観察や会話、作文・ノートの記述、質問紙などを通して適切に見とる。

○学習指導案には学習活動を適切に設定し、評価の観点や評価内容を計画的に設けて個々の学習状況や道徳性に係る成長の様子を見とる。

○子供による自己評価や相互評価は学習活動であり教師が行う評価ではないが、自分自身のよい点や可能性に気づくことを通じ主体的に学ぶ意欲が高まるなど、学習の在り方の改善に役立つものなので、これらを効果的に活用して学習活動を深めていく。

(おわり)

この連載の一覧