【学習科学と先端技術の可能性(4)】学習活動の設計とEdTech

聖心女子大学教授 益川 弘如
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学習科学の研究領域におけるEdTechの活用は、CSCL(Computer Supported Collaborative Learning:コンピューター支援による協調学習)ともいわれる。

EdTechの活用で重要なのは、教授側が準備した知識をいかに効率的に個人のペースに合わせて順序良く学んでもらうかという個別最適化の追求ではない。他者との対話を通じて能動的に情報を入手し、自分の考えや理解を見直しつくり上げていく――一人一人異なるその思考過程を深める支援という意味での個別最適化を実現することだ。

学習科学では基礎・応用と知識・技能を切り分けるのではなく一体的に捉え、対話を通じた学習者の能動的な学びを単元・カリキュラムの設計に取り入れることが、資質・能力の育成につながると主張している。

それはなぜか。他者との対話を通して能動的に学ぶとき、学習者は「答えを知りたい」と問いを持ち、多様な資質・能力を発揮しながら目標に向かって一生懸命に考える。そこから意味や根拠まで追究する深い学びにつながり、同時に「資質・能力を使ったから深く学べた」という実感が自信になり、自らの資質・能力を磨き上げていくような学習活動につながっていくからである。

カナダの学習科学者マーレーン・スカーダマリアらは、教育改革には3つの進め方があると述べている。

1つ目は「付加的変化」である。従来の取り組みをそのまま効率化させ、空いた時間に新しい取り組みを付加する形だ。基礎的な知識・技能は「AIドリル」などに任せて、探究活動やSTEAM、プログラミングを加えるイメージだろうか。これだと旧来の学習理論や素朴教育観に基づいたままだ。

2つ目は「融合的変化」だ。従来の学習目標を大事にしながら、可能なところから新しい学習形態を採り入れる形だ。主体的・対話的で深い学びや探究活動を時々取り入れ、タブレット端末などを活用しながら資質・能力を育むイメージである。学習者は旧来の学習理論と新しい学習理論を並行して学ぶ形になり、「学び方の学習」が分断されてしまう恐れもある。

今、求められている教育改革の進め方は3つ目の「一体的変化」だ。新たな学習目標を見据え、その目標に向けた学習環境をデザインし直すものである。新学習指導要領で求められている資質・能力の育成という目標の下、最新の学習理論に基づき、単元・カリキュラムを見直していく。

全ての知識・技能について主体的・対話的で深い学びを実現する授業やEdTech活用、そして新たな学習目標を評価する方法を検討していく必要がある。

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