【ICEモデル(6)】アクティブラーニングとICEモデル

京都情報大学院大学副学長・教授 土持 ゲーリー 法一
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最近、多くの高校や大学で注目されている学びの枠組みに「ICEモデル」がある。「ICE」はIdeas(アイデア、知識)、Connections(つながり、理解)、Extensions(応用)の頭文字をとったもので、この3領域を連動させて学びを深める学習モデルである。

指導と評価が一体化している点が特徴であり、日本には2013年、クイーンズ大学のスー・ヤング博士らの共著『「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル』(東信堂)の翻訳を通じて筆者が紹介した。

ヤング博士によれば、ICEモデルは授業デザイン研修の過程で生まれたものであるという。授業デザインには教員中心と学習者中心のものがあるが、学習パラダイムへの転換を機にバックワード・デザイン(逆戻りデザイン)の考え方が注目されるようになった。つまり、学習者中心の学びにおいては学習者の視点に立ち、学生が最も関心を示す成績評価(一般的には授業のシラバスの最後)からスタートするという考え方である。

またヤング博士はI・C・Eが独立して存在するのではなく、I領域の中にもCEがあり、C領域にもIEが、E領域にもICがあるという認識が必要だと注意を促している。原著では「ICEモデル」ではなく「ICEアプローチ」となっている。

ICEモデルの特徴はI・C・Eのどこからでも始められるところにある。筆者は、このモデルの優れている点はCにあると考え、授業ではCから始めるようにしている。なぜCが重要かというと、質問につながるからである。質問の後に付くクエスチョンマーク(?)を逆さにするとフックの形になる。すなわち、学びをフックする――学習者のアクティブラーニングを促すフックとなるのがCなのである。

ジェイムス・フレイザー教授と筆者

ICEモデルを授業で実践しているクイーンズ大学のジェイムス・フレイザー教授(物理学)にインタビューしたことがある。彼は数年前に、カナダ国内ベストティーチャー賞(3M National Teaching Fellow)に選出された優れた教育者である。

驚くことに、彼もICEのC領域が学生の学びをつなげるのに重要であると力説していた。しかし、学生にとっては難しいようで、同じCでも「Confusion(混乱)」の方だと嘆いていた。さらに、Eについては個人差があり、学部レベルではあまり気にしていないと話していた。

課題を発見するには多くの質問(クエスチョン)が必要である。クエスチョンマークを二つ重ねれば∞(無限大)となるように、限りない可能性が引き出される。学びとは「質問で始まり、質問で終わる」と筆者は考えている。

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