【「ギフテッド」の子供たち(6)】子供の利益になる話し方

どんぐり発達クリニック、ギフテッド研究所理事長 宮尾 益知
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欧米では、人間の成長・発達は一人一人違っているという前提が受け入れられ、尊重されている。早くから習熟度別指導が導入され、一般化しているのもそのためだ。子供たちは自分がギフテッドであること、またその教育を受けられることを誇りに思っている。

一方日本では、人間は皆同じペースで成長・発達するものだと考えられていて、特別な教育を受ける子供は「変わっている」と捉えられる。そこにはマイナスのイメージもつきまとい、欧米のような教育を推進するには難しい環境にある。そのため、ギフテッドの子供であっても通常の学校、クラスで教育を受けている。

ギフテッドの子供が持つ特性―自分にとって利益、興味があることしかしない、完璧を求め間違いを許せず、そのストレスによる行動が自分や周囲の人間に向けられる、感情の起伏が激しい―は、時に学級経営上問題となり、いじめや教師からの叱責を誘発する場合もある。

ギフテッドの子供に接するとき、筆者が心掛けていることがある。興味のない授業にはうわの空で全く聞いていない子には「大学生になると周りから(聞いていないと)分からないように振る舞えるよ。でも、先生が一言くらい何かいいことを言うかもしれないから、時々は話を聞こうね」と、態度や行動を否定せずに共感する。

完璧を求め、失敗したら大声を出してしまう子には「医学の世界は100%だと思われているけどそんなことないよ。私はいつも75%くらいの力で診療しているよ。常に100%を求めていたら、朝から夜まで診療なんかできないよ」「75%がパーフェクトなんだよ。75%ずつの確率でやっていたらいつか100%になるからね。そうしないと迅速な対応はできないものね」などと話しながら、子供の興味や自慢したいことを聞き出している。

子供は次第に「宇宙」「原子」「水生生物」「は虫類」など、さまざまなテーマについて語っていく。豊富な知識に基づく話の内容と情熱に、つい聞き入ってしまうことも多い。

2カ月に一度の来院のたびにこうしたやり取りを重ねていくと、子供はいろいろな悩みを打ち明けるようになり、次第に落ち着いてくる。それに伴い、親の笑顔も増えていく。

子供たちの行動が自己中心的である点を理解すれば、対応はおのずと決まってくる。重要なのは「子供の利益になる話し方」をすることだ。真面目な彼らには、係などの役割を割り振ってみても効果的である。きちんとした言い方で「ここはあなたの居場所であり、あなたは必要とされている」ことを伝える。

間違った行動を取ってしまったときは、少し時間をおいてから、後で一緒に振り返るといい。ただその際は「教師は自分を理解してくれている、尊敬できる」と子供から信頼されていることが前提になる。

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