【学習科学と先端技術の可能性(5)】学力調査やテスト結果の解釈

聖心女子大学教授 益川 弘如
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小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施される全国学力・学習状況調査は、学習指導要領で求められている力がどれだけ児童生徒の身に付いているかを各学校が把握し、授業や指導の改善に活用する狙いがある。

また同調査以外でも、各都道府県で実施する学力調査や業者テスト、教師が作成したテストなど、児童生徒はテストを受ける機会が多い。これらは果たして、児童生徒の資質・能力の育成に貢献しているのか。

全国学力・学習状況調査の質問紙調査には「国語の勉強は好きですか」「算数(数学)の勉強は好きですか」といった設問がある。毎年公表される分析結果では、教科が「好き」だと答えた児童生徒の方が、教科の成績も高いという関係性がみられる。

教科の勉強が好きなことは、深い学びにつながっているのだろうか。筆者は、これらの設問の選択理由も記述してもらう調査を行った。結果を見てみると、理由の回答はさまざまだったが、大きく分けて2つのグループになると分かった。

一つは「漢字・単語・文法・計算・公式・覚える」、もう一つは「作者の考え・意味・理解できる・考える・他国の文化を知る・他国の人と話せる」といったキーワードを書く児童生徒のグループだ。

理由の記述が、児童生徒自身がその教科を学ぶことに対して抱いている素朴学習観を示していた。当然、後者のような理由を書く児童生徒が増えるよう、授業や指導の改善を進める必要がある。

さらに詳しく調べると、より実態が分かるだろう。先端技術を積極的に活用し、詳細を得られれば教育改革にも役立つ。

また、以前ある県で、学力調査の点数が向上している複数の学校を訪問し、学力向上策や授業内容を調査する機会があった。結果、「局所的改善策」と「大局的改善策」に取り組んでいる学校とに分かれた。

局所的改善策の学校では、授業で覚えるべき知識・技能を直接解説した上で、その確認のためにグループ活動を採り入れていた。さらに、知識の定着と「解けた!」という実感を持たせて意欲につなげるために、ドリル学習にも力を入れていた。

一方、大局的改善策の学校では、意味や根拠などの理解をつくり上げるためにグループ活動を採り入れていた。ドリル学習は、授業で理解をつくり上げた後の補助的な活動として導入していた。

資質・能力を育むための教育改革に、テストの点数向上を狙った直接的な改善策が必ずしもつながるわけではない。もっと、児童生徒の日々の学習過程に注目する必要がある。

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