【ICEモデル(7)】ルーブリックによる評価の限界

京都情報大学院大学副学長・教授 土持 ゲーリー 法一
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新学習指導要領をはじめとする国の方針の影響もあり、日本でもルーブリックが活用されるようになってきた。これまでのような教員による密室での一方的な評価から、ルーブリックの評価規準を用いて学習者と共有する、より客観的な評価が可能になった。

しかし、ルーブリックによる評価には限界がある。

評価には大きく分けて二つの方法がある。ディー・フィンク博士は『学習経験をつくる大学授業法』(玉川大学出版部)の中で、「後ろ向き評価」と「前向き評価」があると紹介している。

前者は、教員が教えた内容を学習者がいかに正しく理解・記憶したかを評価する方法で、教員の意図や正解が明確であり、評価もスムーズである。一方、後者は学んだことを踏まえて何ができるかを評価するもので、可能性を引き出すことができる反面、評価が難しい。後ろ向き評価についてフィンク博士は「時代遅れの評価」と述べている。

『学習経験をつくる大学授業法』(L・ディー・フィンク著、土持ゲーリー法一監訳、玉川大学出版部)

このような評価方法は、2045年に到来すると言われているAI(人工知能)が人間の能力を凌駕(りょうが)するシンギュラリティーの時代には通用しなくなる。教育者なら誰もが前向きの評価に関心があるはずであるが、ルーブリックによる評価には「限界」があり、前向きの評価やアクティブラーニングの評価には適さない。

その難題を克服したのがICEルーブリックである。これまでのルーブリックによる評価は、パフォーマンス評価と呼ばれる「レベル評価」であった。そこには、評価の記述内容からも分かるように「いくらか」「少し」「まあまあ」などの曖昧な表現でしか評価できない構造的欠陥があった。

一方ICEルーブリックは、Iの領域、Cの領域、Eの領域など、領域ごとの具体的な評価が可能である。教員が学習者の成績評価のみに関心があるのなら、これまでのルーブリックも効果的なツールと言えるが、学習者の学びに対して「指導」もするのであれば、ICEルーブリックでしか対応できない。学習者がどこでつまずき、どのようにつまずいたか、なぜつまずいたかは、ICEルーブリックでしか明らかにできないからである。

ICEルーブリックでポイントとなるのがICE動詞の活用である。前述の後ろ向きの評価では評価対象が「用語」に限定されていた。用語だけでは学習者がどのように学んだかは分からない。もし、学びの実態を「動詞」で表現できれば、学びを可視化でき、的確な指導にもつながるのである。

次回は、ICEルーブリックによる評価方法をさらに具体的にみていきたい。

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