【学校安全のリデザイン(1)】防ぎようのない自然災害と日常の安全教育

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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2019年はさまざまな事件や事故、災害が発生した年だった。特に、相次いで上陸したかつてない規模の台風には、多くの人が安全や危険に対する認識を変えたのではないか。わが家を揺らす風雨に身を縮め、不安を肌で感じたことだろう。

人間がコントロールできない「自然」という大きな存在から自分の安全を守るには、自身の行動をコントロールしなければならないことに改めて気付かされる。そしてそのためには、正しい情報の入手手段の確保・選択、居住地域の地形の理解、避難場所の確認、持ち出し品の用意、自宅の防災対策、避難方法に関する知識や決断のタイミングに加え、子供や高齢者、障害者に対する配慮、近隣の他者に対する呼び掛けなど、具体的な行動が必要だ。また、日常的な準備の他にも、災害予測の数日前から備え、意識と行動レベルを段階的に高めていく必要がある。

同時に、そのような防災意識や行動は、学校安全における子供への安全教育の一環として考えることも可能だ。その場合、スタンスとして大事なのは、災害を「特別なこと」にしないことである。年に一度の防災訓練で起震車に乗るだけでは意味がない。年に一度やるべきなのは、日頃の学習成果の総合的な確認である。そしてより重要なのは、災害に対する安全教育を日々の生活の中でいかに組み込んでいけるかであろう。

例えば、毎朝その日の天気を話題にし、気温、季節にも触れる。週間予報にも関心を持たせて週末の天気を予測したり、天気に合わせた服装や準備を考え行動したりすれば、危険予測能力向上のシミュレーションになる。また、いつどこで遭遇するか分からない災害から自分を守るために、他人に助けを借りる場面も想定すべきだろう。災害時はコミュニケーション能力も大切であり、日頃から地域の人とあいさつを交わすこともそれにつながる。こうした日常の小さな積み重ねが、緊急事態でも適切に判断し行動する力になるだろう。

災害自体は人間の力でどうにもできないが、学び、備え、行動すれば対応できることを知り、確認していく日々の生活は、安全教育の柱となるだろう。これらは、子供を取り巻くさまざまな危険への対処法とある程度共通している。災害への安全教育を特殊なものとして教えるのではなく、基本を押さえ応用できる力を付けることが求められる。

筆者の研究のキーワードは「子供・危機・教育」である。交通事故や犯罪被害を含むさまざまな危機が、学校教育の中でも依然特別なこととして扱われている現状から、もっと身近なものとして安全教育を普及させたい私なりの視点で、これからの連載を担当する。


【プロフィール】

みやた・みえこ 順天堂大学研究員、日本こどもの安全教育総合研究所理事長。専門は、学校安全・学校保健、教育社会学。著書に『うちの子、安全だいじょうぶ? 新しい防犯教育』(新読書社)、防犯教育紙芝居『安全におうちへ帰ろう! じぶんをまもる4つのアイテム』(日本こどもの安全教育総合研究所)、『地域コミュニティと教育~地域づくりと学校づくり~』(放送大学教育振興会、共著)など。

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