【ICEモデル(8)】ICEルーブリックによる評価の事例

京都情報大学院大学副学長・教授 土持 ゲーリー 法一
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前回、これまでのルーブリックによる評価には限界があると述べた。評価規準の記述に使われている表現は「十分」「ある程度」「ほとんど」「あまり」など曖昧であり、レベル評価にとどまっているためだ。この場合、絶対評価と相対評価のどちらを用いるかという問題もあり、教員を悩ませている。その問題を解決するのがICEルーブリックだ。

ICEルーブリックの記入例

表は、筆者の「ラーニング・ポートフォリオ」をICEルーブリックで評価した事例である。縦軸の評価規準(観点)はこれまでのルーブリックと同じだが、横軸の評価基準はレベル評価ではなく、領域ごとの評価記述になっている。この点こそ、ICEルーブリックが指導にも使えるゆえんである。ICEは3つの領域を教員と学習者で共有できるからである。適切な評価は難しい。しかし、多様な方法・観点を組み合わせることによって、客観的な評価が可能となるのである。

これまでのルーブリックの評価規準はA・B・C・Dのレベル評価であったが、ICEルーブリックはI・C・Eの領域におけるアセスメントを可能にする点から、質的評価ということができる。学びの現場では、学習者がどこまで理解し、どこでつまずいたかが分からないことが多い。ICEルーブリックのICE動詞を活用すれば、学習者の問題点が明確になり、具体的な指導につながる。結果、主体的な学びを引き出せるのである。

教員にとって評価は頭痛の種である。完璧な評価を求めるのは教員の職業病みたいなものだ。しかし、完璧な評価など幻想であり、それに近いものを目指しているにすぎない。

評価には「評価(Evaluation)」と「アセスメント(Assessment)」の2つの側面がある。ディー・フィンク博士がアセスメントに「教育的評価」と注釈を入れているように、教員には学習者の学びを「アセスメント」する考えが重要である。アセスメントは学習の改善を促す評価方法であり、「学習者と膝を交えて話し合う」という語源が示すように教育的である。

「学習パラダイム」の提唱者であるジョン・タグ教授は、レポートをすぐに採点せず、コメントだけ付けて返却するという。そして、そのコメントを参考に学生が修正したレポートに評価を付ける二段階方式を取っているそうだ。すなわち、アセスメントした後に評価するという考えである。

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