【「ギフテッド」の子供たち(7)】論理的な説得の難しさ

どんぐり発達クリニック、ギフテッド研究所理事長 宮尾 益知
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多くの母親は、自分の思うようにスムーズに進行していく日常生活を理想としている。そんな母親の気持ちに共感しながら行動できれば完璧なのだろうが、子供にとってこれほど難しいことはない。

自分本位で衝動的、こだわりが強く感覚過敏があり、興味のあることしか行わないギフテッドの子供であればなおさらである。母親にとってギフテッド、あるいは2Eの子供たちは、極論すると最も相性の悪い子供である。母親が論理的に説得しようとすればするほど、個人の論理で返されてしまう。世の中の全ての出来事を論理的に説明しようとすれば可能だが、世界は論理だけで成立するものではない。筆者も相談を受けたとき、知的で論理性の高い子供には論理で説得しないよう勧めている。

ある有名な大学教授は妻とけんかすると、白板に妻の問題点や悪いところを列挙して論理的に説明していくそうだ。普段はとても仲のよい夫婦で、子供との関係も良好だという。しかし、当然ながら夫のその言動に妻は感情的になり、泣きわめいて「もう晩ご飯は作らない」と怒りを爆発させる。夫である大学教授はそこでやっと「ごめんなさい」と謝るそうだ。つまり、相手に何かを訴える、何かを求めようとするときに、論理的な説得が最良の方法とは限らないのである。ギフテッドや2Eの子供たちに対しても、本来の自分自身を出して説得に当たる方がよい。

また中には、子供の科学的興味の深さに「もしかしたらこの子は天才なのでは」と過度な期待を寄せる親もいる。このような親にはいつも、レオナルド・ダ・ヴィンチやトーマス・エジソン、アルベルト・アインシュタインのような500年に一人の天才ではない、そうはなれないと思っておくことが重要と話している。親が期待し過ぎないよう、くぎを刺すのもわれわれの仕事のひとつである。

他方、子供の興味を広げ、彼らの素晴らしい未来をつくり上げていくのは教育の仕事である。教育に課せられた役割は、ギフテッドの才能の芽を摘まぬようにしつつ、社会から許容される言動が取れるようにすることだ。例えば、教師が親に対して「自分も(ギフテッドの子と)同じような考えを持ち、いろいろと困った行動を取ってきたので理解できる」と伝えれば、安心して子供を預けることができるだろう。子供の意欲をそがないよう、社会の中に溶け込ませていくために、彼らの成長を支える大人として、まずは共感する意識付けから始めたい。

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