【学校安全のリデザイン(2)】交通事故もリスク最小化は可能

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
この連載の一覧

昨年、東京・池袋で自転車に乗っていた幼児と母親が高齢者の運転する車にはねられ死亡した。その半月後には滋賀県大津市で、歩道で信号待ちをしていた保育園児と引率の保育士の列に女性が運転する車が突っ込み、園児2人が死亡、14人が負傷する事故が発生した。

偶然の要素が重なった「一瞬」で、保育士が大勢の園児を避難させるのは極めて難しく、その意味では防ぎようのない事故だった。二つの痛ましい事故に共通するのは、交通弱者である子供が大人の管理下で交通規範を順守していたにもかかわらず、犠牲になってしまったことだ。

学校安全教育の目標は①安全課題に対する思考・判断・行動選択力を付ける②危険を予測し、自他の安全に配慮できる③安全活動に進んで参加し貢献できる資質を育む――の3点だ。

中でも②の、まだ見えていない危険を予測し行動することは、子供に身に付けさせたい重要な能力だ。しかし交通法規や信号によって安全が高度に管理された社会では危険予測能力が働きにくく、青信号なら目をつぶっていても安全、という過信が生じがちだ。

子供が歩いているとき、すぐ傍を走り抜けていく大型トラックや車の風圧を耳元で感じてヒヤリとした経験があるなら「接触するかもしれない」「ひかれるかも」「けがをするかも」と予測する力も身に付くだろうが、そうでなければ狭い道をどう通ればいいか想像するのは難しい。

現代の交通安全教育では経験に学ぶのが難しい分、いかに自分に引き付けて考えさせられるかが指導のポイントになる。実際の事故を例に挙げるのも大切だが、子供が使っている道路と同じ条件に置き換え「わがこと」として考えられるかが大事だ。子供が毎日通る道路の、この曲がり角で何が起こり得るのか、地域の安全な歩き方を具体的に身に付けるフィールドワークも効果的だ。学校だけで難しければ、家庭や地域との連携や共有も重要になる。

横断歩道を渡る歩行者が、青信号でも過信せず安全確認を十分に行った上で踏み出せば、リスクを下げることになる。歩道で信号待ちをする際も、どこで待てばよいか場所ごとに考える癖を付けるようにしたい。

危険予測能力を高めたり安全な歩き方を身に付けたりするには、日々の生活の中で習慣として行えるようにする学習が必要になる。現状の行動に加え、常にワンランク上の安全があるかどうか、考えて実行できるように指導したい。そうすれば、防ぎようのない事故があるとしても、リスクは最小化できるのだ。

子供が歩行者としての安全行動を習慣化する教育の積み重ねは、将来のドライバー教育にもつながり、加害者とならないための教育にもなる。事故は取り返しのつかない悲劇と、生涯悲しみを抱き続けなければならない人を生む。その悲しみを人ごととせず、相手の気持ちに寄り添える心を育む、そのような安全教育であってほしい。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集