【学習科学と先端技術の可能性(7)】思考過程を捉え授業と評価を改善

聖心女子大学教授 益川 弘如
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テストで本来測りたい力をみるため、観察の窓を広げるには、どのような方法が考えられるだろうか。前回紹介した2015年度センター試験の国語の小説問題を活用した研究では、さらに観察の窓を広げた実験を行った。

実験では、設問の選択肢の選択部分を削って「記述式」に変えたものを用意し、「選択肢式群」と「記述式群」に分けて比較した。加えて、1人で解いた後に2~3人で話し合ってもらい、その対話データを分析対象とした。選択肢式で回答した後に話し合った参加者は、誤答だと考えた選択肢がなぜ違うのかを1つずつ確認する「間違い探し」の話し合いだった。

一方、記述式で回答した後に話し合った参加者は、どのような物語の展開内容だったのか各自が解釈を出し合い、本文と照らし合わせながら互いの解釈の違いについて深めていく対話が起きていた。後者の方が「読解力」を発揮していると言えるのではないだろうか。

さらに興味深かった点がある。小説で登場する主人公「わたし」の性別は女性だったのだが、話し合いは選択肢式グループの3分の2が男性と勘違いしたまま続いた。しかし、話し合った設問は全て正答していたのだ。記述式のグループは全員、主人公「わたし」を女性と認識した上で(もしくは途中で「女性だった!」と気付いて)話し合っていた。

測りたい力を知るためにどんな観察方法を選択するべきか。採点コストなど制約は多いが、定期考査や小テストなど、教師が作成するテストにも工夫が必要となるだろう。

全国学力・学習状況調査でも、1人で解いた後に2~3人で話し合ってもらう試みもしている。ここでは、出題者や教師が予想していなかった部分で「つまずき」がみられることもあった。教師にとっては今後の指導内容のヒントになる。

また、誤答から正答に修正できた児童生徒には、互いにどのように考えて解いたのかを説明し合い、違いを比較するような対話が起きていたが、修正できなかった児童生徒には、答えを何にしたか伝え合うだけで、考え方を比較するような対話は起きていなかった。教師がこのような情報を得ることは、対話を通して理解を深める授業づくりへの見直しにもつながる。

今後、授業と評価を改革するために、学習者の思考過程を丁寧に見る機会を増やすことが重要だ。授業でもテストにおいても丁寧にその思考過程を検証することによって、学習過程のデータにも基づいた、より良い改善につなげられるだろう。そして、多くの学習過程データを集めるには先端技術の活用が欠かせない。これについては次回触れる。

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