【「ギフテッド」の子供たち(8)】子供の「苦手」をどう支えるか

どんぐり発達クリニック、ギフテッド研究所理事長 宮尾 益知
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2Eの子供への教育は、個人の障害と才能の特性に応じて学習内容や方法を個別化・個性化することで成り立つ。通級指導教室などでの個別指導、通常学級で展開されるユニバーサルデザインに基づく授業など、日本の特別支援教育で行われている実践のいくつかは、2Eへの教育方法と重なる部分も多い。

2013年に成立した「障害者差別解消法」は、国連の「障害者の権利に関する条約」への批准に向けた国内法整備の一環として制定された。全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することがその目的である。

では、2Eの子供たちにとっての「障害」とは何だろうか。

共通して言えるのは、文章を書くことが苦手であるという点だ。高い語彙(ごい)力や文章理解力、特定の能力を持つ一方で、書くスピードの遅さが指摘されている。これは、不器用さ(発達性協調運動障害)とも関係していると思われる。クリニックでは作業療法による感覚統合訓練を行い、感覚過敏、不器用さ、書字能力の改善・向上を図っている。

具体的には、姿勢、目と手の協調に注目した指導である。知的能力が高く概念的な理解ができるので、ノートに書く量をできるだけ減らしたり、教科書やあらかじめ配布された資料に書き込んだりすることも勧めている。

全ての子供にきれいにノートを取るよう求めることが、彼らの意欲をどれだけ失わせているのかは想像に難くない。特に10歳を過ぎると、自己を他者と比較するようになるため、苦手を強いることで自己有能感が持てなくなる傾向にある。苦手な作業にはできるだけ少ない時間で済むようにする工夫を心掛けるべきである。キーボードを用いたり、デジタルカメラで撮影したりするのも一つの方法だ。タブレット端末の文字化アプリや読み上げアプリを使うのも効果的である。

並行して、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を行いながら、社会性も改善していく。ただ注意すべき点もある。クリニックでギフテッドの子供ばかりでSSTを実施したところ、自己中心的で他人の話を聞かない様子が見られた。同じような子供同士ではもともと分かり合える部分も多く、社会性の訓練になりづらかったのである。そこで、半分は知的に平均的な子供たちも参加させるようにして、多様性を持たせるようにした。

さらにクリニックでは、筆者が監修した発達障害VR支援プログラム「emou」によるSSTも導入している。個別的・状況別にSSTを行えることから、今後の可能性に期待できる。クリニックでは現在、使用実績を重ねながら、どのような使い方が有効であるかを検証している。

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