広 告

 ICEモデルとICEルーブリックは表裏一体の関係にある。ICEモデルは学習方法で、ICEルーブリックは評価方法であるが、ICEルーブリックは指導にも使えるのが最大の武器である。領域ごとに評価でき、質的評価を可能にするからである。

 ICEルーブリックが画期的なのは、評価規準の記述表があらかじめ学習者に周知される点である。もちろん、点数配分は教員が決める。事前に、授業でのウエートの掛け方を明らかにする必要がある。試験の直前になって、評価規準記述表を提示するようなことは慎むべきである。ICEルーブリックを参考に指導案を作成できれば、学習と評価を「一体化」することもできる。すなわち、学習と評価に整合性を持たせることができるのである。学習者が評価規準記述表を見れば、教員が授業のどこに重点を置いているかも分かるようになる。

 ここで、ICEルーブリックは評価のためのルーブリックとしてだけでなく、「指導」のためのツールであることを改めて強調したい。例えば、レポートやポートフォリオの課題を出すときに、評価規準記述表も合わせて渡すようにする。学習者は評価規準記述表を参考に課題に取り組み、「自己評価」と一緒に教員に提出する。教員は学習者からの評価規準記述表と自己評価を参考に、独自に評価して別の色のマーカーで採点して返却する。このとき評価規準記述表は、教員と学習者の間を「往還」するツールとなる。ICEルーブリックが「指導」にも役立つ瞬間である。

 教員から戻されたICEルーブリック評価規準記述表を通して、学習者は自らの問題点を発見できる。例えばライティングの授業では、その評価規準記述表を図書館に設置されたライティングセンター担当者と共有することで、効果的な指導を受けられるようになるだろう。そして教員は評価規準記述表を使って、学習者がどこにつまずいたのか、どこが問題なのかをフィードバックすることができる。

スー・ヤング博士(中央左)、ビッキー・レメンダ教授(地質学)
スー・ヤング博士(中央左)、ビッキー・レメンダ教授(地質学)

 筆者がインタビューしたクイーンズ大学のビクトリア・レメンダ教授(地質学)は、従来のルーブリックは固定されたレベル評価であるため、ICEモデルのようにIからCへの動きが読み取れないとして、早くから学部でのICEモデル導入をけん引している。また、タグ教授の指摘と同様に「学生からのレポートにコメントだけ付け、評価しないで返却している。コメントを踏まえて修正したレポートに最終評価を付ける」のだという。アセスメント評価と呼ばれる手法である。評価してしまえば、学生の「学びの継続」を損なう恐れがあると説明してくれた。

広 告
広 告